(記&画/minaco.)
〜前回 の続き〜
村中を驚かせた元ワンダーな娘と年老いた男の結婚から、早ひと月。二人は
マレーシアから韓国・中国を巡る、ハネムーンへ出かけました。
ある晩のこと。娘は男に囁きました。
「その愛が本物なら、何か証をくださいな。だって、
結納金すらいただいていないのですから」
男は答えました。
「可哀想な娘よ。ならば、我が家の由緒ある家宝を授けよう」
男が代々受け継がれた
七番の付いた着物を娘に差し出したので、娘はたいそう喜びました。
「まあ嬉しい。きっとわたしに似合うはず」
その頃、複雑な思いを抱く者がいました。一人は娘の実家、赤い家を預かる異国の
口髭管理人です。
魔術師と呼ばれた頃もありましたが、たびたび男に出し抜かれたせいで焦っていました。今回の結婚もきっと何か企みがあるに違いない、と勘繰っています。
もう一人は、男がかつて息子同然に育てた美しい青年です。彼は昔々七番の着物を着ていましたが、いつしか
魔女にかどわかされ、暗黒面へ堕ち、怒った男に勘当されてしまったのでした。おかげで今は、遠い遠い新大陸で孤独な暮らしをしています。たいそう裕福ですが、故郷の村を恋しがっておりました。かつて白い王国で一緒だったワンダー娘が、彼には羨ましく映りました。
やがて娘は新しい家族と共に、新しい七番をお披露目しました。娘はかつての輝きを取り戻したかのように踊りました。男はそれを見て、ふと疑念がよぎります。
男は思い切って尋ねました。
「娘よ…お前はまさか、実家への復讐を考えておるのではなかろうな」
すると、娘は微笑んで言いました。
「貴方こそ、わたしの実家へ圧力を掛けようと企んでいらっしゃる」
娘は知っていました。男がこれまでにも宿敵である赤い家の管理人を手玉に取り、精神的に追い詰めていたのを。そして、男も知っていました。娘にはどこか黒い情念が潜んでいることを。
「賢い娘だのう。知っておるのなら、それでよい」
「勿論ですとも。今ごろ実家は心中穏やかではありませぬ。村中がわたしたちに注目して、沢山の話題を作るでしょう。赤い家の管理人もそれに惑わされ、仕事が疎かになる…だから、わたしにとっておきの着物を下さったのでしょう?」
「お前こそ、わたしを利用して赤い家を困らせようとしておるな」
「まあ物騒な。お互いに最良のパートナーですこと」
二人はそっと手を取り、見つめ合いました。
一方、村ではある噂がまことしやかに囁かれていました。行く宛てを失くした美しい青年が、村に帰ろうとしているのだとか。しかも、その預かり先候補に娘の実家も挙がっているとか。
美しい青年は、ようやく魔女の魔法から解かれました。そして自分が失ったものをすべて悟ったのです。彼は男に受けた仕打ちを忘れていませんでした。赤い家の口髭管理人も青年を利用して、男への仕返しを考えました。
冬を迎える時、村には新たな展開が訪れようとしています。物語の行く末を、誰一人知る由もありませんでした…。
〜続く〜
って、全部妄想だけど!もしこうなったら、それはそれで面白い…。