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イラストレーターMinacoとなるほ堂が、サッカーのこととか、映画のこととか、日々日常に関して、その情熱の総てを地球にぶちこんで叩き付け、戦い挑み、愛を説く日々の記録。
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skin by なるほ堂

by tototitta
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第六話『Call me Wonder』(後編)
(記/なるほ堂、絵と監修/minaco.)

【#06 Man Utd 4 - 3 Man City】
放送内容変更のお知らせ:お送りします『Stretford Endにほえろ!』第六話は、「シルバーウィーク特別企画」として、前後半に分けて放送しております。ご不便をおかけしますが、どうぞ前編から先にお読み下さい。
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2009年9月20日──

陽光差し込む「シアター・オブ・ドリームス」の壇上に姿を表したシティーズ。迎えたデヴィルズファンの大ブーイングにも、彼ら「成り上がり」たちは怯まない。

"どうも、CITYです。いいじゃない。いい感じじゃない。
何てゆうの? こう、アウェイサポーターの情熱? 魂の叫びって感じ? ソウルってゆうの?
そういうのCITY、嫌いじゃないんだよね。
ここにいる人達、何? ウルトラスってゆうの? すごいCITYにインタレスティングもってくれてるわけだけども、そういうのってさ、CITY的にもやっぱ嬉しいわけよ。
まぁ、CITYとしてはこれからもビッグクラブへ走り続けるわけで、
それはいくらブーイング浴びようが、そのスタンスを変えるつもりは、
ダイレクトに言うと、無いわけよ。言いたいのはそれだけ。
じゃあ一曲目、聴いて下さい──『中東石油マネーで成り上がれ!』
そこんとこ、ヨロシク!"


だが、その時だった。

「お前たち、逮捕する!」

会場内に響くは、この街の平和を守る勇者たちの声──客席中央から、赤悪魔署の登場だ!
慌てて袖から姿を見せた、元デヴィルズで現在シティーズのマネージャー、マーク・ヒューズに、ボスが逮捕状を読み上げる。
【容疑/著作権法違反】

シティーズの『中東石油マネーで成り上がれ!』は、ロンドンのバンド『The Chelsea Blues』が04年に発表したアルバム『チェルシーは油の味』内に収録された『ロシア石油マネーで成り上がれ!』(作詞作曲/ジョゼ・モウリーニョ)の盗作である。即刻公演を中止せよ。
二匹目のドジョウ、いや二つ目の油田は許さない──壇上のシティーズに襲いかかる刑事たち。

戦いが始まった。

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先手を取ったのは、やはり赤悪魔署。

ウェイン刑事が開始5分で楽々と逮捕記録を延ばすが、新生シティーズに「公演」を止める気配はない。先のガナーズ公演でアデバヨールがマイクを取り、大反響を呼んだナンバー「古巣潰し」を、今日はテヴェス容疑者が歌う。

すると動揺した若手、フォスター刑事がやらかした。以下、『始末書』──
【赤悪魔署関係各位の皆様へ】

平成21年9月20日、私は、捜査に際してボール処理の判断を誤り、失点という結果を招きました。その結果、赤悪魔署の職務に支障を生じさせ、またサポーターからの信用を損ないました。

この事態は単純ミスから生じたものとはいえ、確実な作業を心がけていれば起き得なかったことと存じ、深く反省しております。署ならびにサポーターさまに対し、哀心よりお詫び申し上げます。

今後は、このような不始末を二度と繰り返さないことをお誓いいたします。このたびは、寛大なご処置を賜りますよう、お願い申し上げます。以上
だめだこりゃ……と、エド親子。勢いづくシティーズ。マンチェスターの街にまで貼られた「政権交替」のポスターが、人々の目に現実味を帯びて映り始める。だが、「永遠の伏兵」ことスコッチ刑事がそれを許さない。後半早々の検挙──その活躍、正に「シティハンター(声・神谷明)」。

刑事たちが犯人たちに迫る──無駄な抵抗は止めるんだ! お前たちはビッグじゃない!
されど刺青の凶悪犯ベラミー容疑者の歌唱が、またも赤悪魔署との戦いをイーブンに押し戻す。

Whatever you do.Whatever you say.Yeah I know it's alright
──♪お前らが何点取ろうが、お前らが何言おうが、俺には関係無いぜ!




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You're my wonderwall……

ギブン容疑者の「壁」に、何度も跳ね返されるガルシア刑事。
ただ、時間ばかりが過ぎていく事件現場。
膠着する状況に、すかさずボスは決断した──ワンダー刑事、出動だ!

だが、ワンダーは答えた。

"Call me Owen……"

赤悪魔署に移籍以来、今日まで然したる結果も残せぬ故か、はたまた当番組の執拗なる活躍予告故か、いつしか彼にとり「ワンダー」という名は重荷となっていた。

その頃──TVの向こうではエマニュエル・アデバヨールが、息子(エマニュエル坊や)と妻(エマニュエル夫人)と共に、戦いの模様を見守っていた。

Don't look back in anger. I heard you say……

怒りで過去を振り返るな、そう言うのを聞いたけど──しかしガナーズへの怒りを拭えなかったアデバヨール。俺の居ないシティーズは、ノエルの居ないOASIS、クリープの無いRadiohead。テヴェスはステージ上を縦横に走るが、基本的にゴール前では音痴だ……。

トーゴ人の予感は的中した。ショートカウンターのみの攻撃では、赤悪魔署の追跡から逃げる事は出来ない。お手柄はまたしても、スコッチ刑事。彼の唄うスコットランド民謡「蛍の光」が、ゲームの終焉を告げる。

されど……なおも諦めぬ、シティーズ。
過去も今も、デヴィルズのライバルはリバプールのビートルズだけ──その事実を、「余裕」を以て示そうとした婦警リオ姐さんの油断が、瀕死のシティーズに検問突破を許す。

シティーズが再びマイクを握る。

♪LIVE FOREVER
──俺たちは死なない



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そして、ロスタイム。
以下に起きた出来事を、この非力な書き手に、文字として表す事は出来ない。
奇跡的な同点劇に、「成り上がり」たちは、至福の時にいた。

♪同点で構わない、時間よ止まれ──

しかし、誰もが放り込みを予期していた所に、悪魔が来りてパスを出す。
胸毛刑事の悪魔のスルーパス──そして、勝利。

私は、シティーズの敗因をこう思う。

この日、彼らはデヴィルズの背中を追いかけるだけだった。即ち、デヴィルズと同等で在る事で、彼らは満足してしまった。スコア然り、その「存在」としても然り。だがその一方で、デヴィルズは、常に「世界」を見据えていた。

そもそも、ビッグとは「資金力」を指す言葉では無い。
スタジアムへの入場時──スタスタと闊歩して登場したシティーズに対し、手を握る障害者らしき少年を気遣いながら、その覚束ない足取りに併せ、ゆっくりと歩みを進めたギグス。

ビッグとは、「優しさ」なのだ。

そして、マネージャーの差。この日、シティーズが大金を投じてこしらえたディフェンスは、組織として全く機能していなかった。一方、赤悪魔署で輝きを魅せたのは、高齢のギグス、マーケットで廃棄物同然だったオーウェン、そしてフレッチャー──如何に財布に大金が入っていても、「物の価値」を正しく判断出来ない者に、最高のバンドを率いる事は出来ない。

私は喧騒去りし舞台に登り、そこに残されたギターを爪弾いた。

高レヴェルな演奏者の為に用意された、高性能アンプ。それに繋がる、中東石油が供給する火力発電の高電圧──だが、それで思う様な音が生まれるとは限らない。この日のシティーズは、肝心の何処かが「過電圧」に耐えられなかった。私は壇上に落ちたマイクを拾い上げ、劇場を去り行くシティーズたちの背中に向けて言った──

"ヒューズ"を交換した方がいいんじゃないか?


そして人垣の向こう、去り行く刑事たちの中に、私は今日の最高の殊勲者の姿を見つける。
この日、彼が体現した「ロスタイムの奇跡」という伝統──今日、彼はユナイテッドの歴史の一部となった。

私は叫ぶ──

「よくやったぞ、ワ……いや、オーウェン刑事!」

だが、男は振り向きもせずに、答えた──

"Call me Wonder"



to be continued...



第六話『Call me Wonder』(後編)_d0031385_21213134.gif
第六話『Call me Wonder』(後編)_d0031385_21304135.gif
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次回『2009年 ワンダーの旅!』、
次回もワンダー刑事の活躍に、どうぞご期待下さい。
(タイトルは予告無く変更される場合があります)

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このドラマはフィクションです。実際の人物・団体・
実在する「マンチェスター・シティ」とかとは、一切関係ありません。
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by tototitta | 2009-09-21 21:48 | Manchester United | ▲ TOP
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