ハイ、あたしはシーズンチケット・ホルダーのエリザベスだよ。いつもオールド・トラッフォードでファーギーのすぐ後ろにいるから背後霊に間違われてるけど、もう長い事ユナイテッドを見守ってきたサポーターさ。しょっちゅうTV中継で見切れてるからご存知でしょ。
いやね、あたしも長年観てるから今更どうって事ないけどね、最近のプレスときたらほとほと馬鹿げた話を書くもんだね。この間のカーリング・カップ決勝の事だよ。ルートが出られなくて優勝セレモニーで仏頂面を曝したもんだから、タブロイドは大喜びで喰いついて来るんだよ。やれ確執だの何だのとさ。笑っちゃうねえ。見たかい、次のウィガン戦でベンチに座るルートに群がったカメラマン共の数を。
きっとファーギーが「これでも噛んで大人しくしてろ」って自分愛用のガムをあげたんだろうね。珍しくじっとガム噛みながら、あの男はピッチを眺めてたよ。何でもミッドウィークの代表戦に行って胃炎になって帰ってきたそうじゃない。だからこの日もまだベンチだろうとは思ってたよ。全く、ツイてないねえ。
でもこんな噂なんて毎度の事さ。サハは怪我からやっと復帰して、カップ戦でもリーグ戦でもゴールを積み重ねて来た訳だ。それを評価してやるのは当然だよ。でなきゃ、何の為にサハがいるのって事になるじゃない。ファーギーだって彼に心を砕いてる証拠だよ。ルートにもそれは話せば解るはず。
ただね、あいつはマトモじゃないからね。頭で理解出来ても一度入ったスイッチは簡単に消せないんだ。そういう時は誰にもルートは抑えられないのさ。つまり、黒ルートと同じようなモンよ。皆そんなものだって知ってるから、驚きゃしないね。
FAカップで負けた後、あいつは次のカップに相当入れ込んでただろう。だからそこで「いいよ、君はベンチに居なさい」って言われても「ハイ、OK」なんて切り替える事なんて出来ないさ。オレの何がいけないんだ、どうすりゃいいんだってパニクってたんだと思うよ。最後まで出番があるかもしれんって信じてたかもね。
勿論優勝して嬉しくない訳じゃないし、ゴールした仲間と一緒に喜んでたのは本当だよ。「あれは演技だ」なんて言う意地悪な輩には「そうだとしたらオレはオランダ一の役者だね」ってルートが言ってたけど、アンタほど解り易いリアクションの人間はいないんだから見りゃ解るっての。
でもせっかくのセレモニーで、あんな凹んだ姿を世界中に曝すのは良くない。周りがドン引きするわよ。スミシーの辛さを思えばこのくらいで落ち込むなって。そこは監督ならビシッと厳しく叱ってやらなきゃね。正直すぎるってのも困ったモンだよ。見なさい、フレッチなんか働いてもいないのに、ロッカールームで呑気に皆の分のピザをパクついてたわよ。ああ全く・・・バーズリーの方がずっと大人だわさ。
だから今回の件はルートにも責任はあるの。あの男が余りに貧乏性だからいけないのよ。「お前の分は後で取って置いてやるから」って言っても、「でももし無くなったらどうしよう」ってハラハラしちまう・・・食い意地が張ってるったらありゃしない。どうしようもない飢餓への恐怖がDNAに染み付いてるのね。オランダの農民って可哀相〜。
今ビッグクラブはターンオーバーも当たり前なんだから、もっと大きく構えなさい・・・って言ってもムダね。そんな男がミランなんて所でプレイ出来ると誰が思う?務まりっこないわよ。ユナイテッドとファーギーでなくちゃ、とても使えないわ!
アウェイのウィガン戦ではファンも開始早々からルートのチャントを歌ったわ。「大丈夫、心配するな」って意味かもしれない。サハも大事な選手だけど、ルートのゴールが皆観たいのよ。チームメイトもロンの同点ゴールの時、まずルートのアシストを祝福してくれたわ。有り難いねえ。だから解ってるだろうけど、ちゃんとコンデション整えて、またピッチでチームに貢献しなさいよ。そして今度は賭けに勝って、ファーギーの財布を泣かせてやりなさい。
ああ、何でウチの選手はこんなに世話が焼けるんだろうねえ・・・全く。
じゃあ、またね。
(記&絵/minaco.)