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イラストレーターMinacoとなるほ堂が、サッカーのこととか、映画のこととか、日々日常に関して、その情熱の総てを地球にぶちこんで叩き付け、戦い挑み、愛を説く日々の記録。
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鍋とカレー/リバプール対チェルシー評
(記/なるほ堂)

<CL準決勝2nd/リバプール対チェルシー>

「チェルシーは鍋である」──Minacoは言う。
ロンドンの老舗を買収した成金オーナーから厨房を任された雇われシェフ、モウリーニョ。彼はオーナーから分厚い財布を預かりながら、しかし大衆向けの市場や、時には闇市にも足繁く通い、そこにて「食材」を調達するのを好む。

しかも、彼はそこでも大トロといった値の張る食材ではなく、市場の片隅に置かれた深海魚など、形は悪いが、しかしそれ故に野趣溢れる食材を買い付ける。それは、自身の味付けに絶対的な自信を持ち、また野心家である彼が、料理人としての腕を見せつけたいからかもしれない。
そして彼はそれらを煮込み、“鍋料理”を作る。

しかし、成金オーナーは高級店指向が強い。
「高級料理も作ってよ」
と、シェフに内緒で「ドイツ産高級ソーセージ」や「ウクライナ産キャビア」を買い付け、厨房の冷蔵庫に勝手に入れてしまう。成金は、皆に自慢出来る様な看板メニューが欲しいのだ。

だが、シェフはオーナーの意向など受け付けず、それら「アブラぎった高級食材」をも鍋へと放り込む。すると──、折角の食材も煮崩れ、鍋中で最もアクの強いドログバの出汁に浸されて、負かされてしまう。

何よりこのシェフ、火加減が強すぎるのだ。
確かに強火で煮込めば鍋中の味は均一化され、皆モウリーニョの描くレシピ通りの味になるが、だが具材を無理に溶け合わせた事で、素材個々の本来の味が消えてしまっている。

具一つ一つに個性が無い──、
だから一口食べた味わい以上の奥深さ、それがこの鍋には無い。


一方、
「リバプールはカレーである」──Minacoは言う。赤カレー。
名門の再建を託された流れ板ベニテス。彼もまたパンチの効いた食材を集めて「ごった煮」にするのだが、しかしそこにはカレーならではの工夫がある。
そう、客に合わせて辛さを調節するのだ。

その日によって、クラウチやベラミーといった各種スパイスの配合を巧みに使い分け、お子様向けの甘口から激辛味まで、正にベニテス“マジック”カレーである。シャビ・アロンソはカレーの王子様、絶対に勝ちたい時にはスペシャルメニューの「カツカレー」もありだ。

無論、カレーは決して高級レストランの味ではない。名だたる欧州の五つ星レストランと比べると、カレーの店など一段低く見られがち。試合前、モウリーニョはリバプールを指して「スモールクラブ」と言ったがさもありなん。
だが、カレーは圧倒的に大衆人気が高い。それがリバプールの強みだ。

サポーターたちは「君は決して一人ではない」と歌う。
一様に赤い衣を纏い、クラブに常に寄り添う彼らの姿は、カレーに常に寄り添う福神漬けである。

++++++

鍋vsカレー──、
我々はそんな視点でこの試合を見守った。(恐らく我々だけだろうが...)

常々チェルシーの「つまらないサッカー」に勝つにはどうするかを考えた時、一つの結論としてあるのが「もっとつまらないサッカーをする事」。そして、欧州で唯一それが出来るのはリバプールだと思っていたが、案の定だった。

今日のリバプールは激辛のカツカレー。
店のその日の辛さ段階を顕すキャラガーの顔の赤みも最大値。フットボールを拒み、ゲームの流れを細かく切り、ドログバへの配球を悉く潰すベニテスの策にチェルシーはなす術が無かった。唯一の「味」が断たれた時、モウリーニョには他に隠し味など無かった。激辛対策としてシェバの替わりに入れた新三共胃腸薬カルーも、むしろ攻撃に胃もたれを引き起こし、ならばとロベンという塩を加えてみたものの、所詮塩は塩だ。

鍋料理人モウリーニョでは、カレー職人ベニテスには勝てない──
正にシェフの腕の差が分けた勝敗だったと言えるだろう。そもそも鍋とカレーが戦えばカレー鍋になるのだ。それはやはりカレーだ。

かつてモウリーニョがポルトで欧州を制した時、そこにはただ一人「一品料理」の輝きを持ったデコが居た。だが今の、自身のレシピのみを過信し、その味付けに酔う彼の下にあるチェルシーには、リバプールカレーのスパイスに太刀打ち出来る具材など無かった──。

++++++

例え話ばかりでは何なので、一応現実に即した分析も。
チェルシーの敗因、それはカルバーリョの負傷欠場だったと思う。第一戦のアシストにもある様に、今のチェルシーの攻撃にて唯一鋭い戦術眼を持って動けるのは、DFながら彼のみ。決まり事に縛られたチームの中で、気を見て敏に動けるただ一人の選手だった。だが、肝心な試合を前にして、彼は壊れてしまった。

すると、サイドに於けるもう一つの強力な武器であるエッシェンをその位置で使う羽目になり、結果攻撃に於いて怖い選手が全く居なくなってしまった。ピッチに居るのは、表現は悪いが最初にインプットされた動きしか出来ないロボットだけ。

とすれば、より深く考えるとチェルシー最大の敗因は、オーナーとシェフの緊張関係にこそあったのかもしれない。不要な高級食材を買ってくるオーナーに反発した手前、シェフが、
「必要な食材手配の為にすら、オーナーに頭を下げるのを良しとしなかった」
という噂も。DFのバックアップがいれば、エッシェンを攻撃的に使えたのに──結果論ではあるが、そう考えてしまう。

また、そう考えるとこの敗戦は、このクラブの限界も示している気がする。
オーナーとシェフの全く違う指向性、その緊張感が良い結果を生む場合もあるが、やはり限界があるだろう。近頃ではオーナー、「打ち上げパーティーに参加しなかった云々」で選手から不信を得ていると聞くし、今回のシェバ欠場には「もしやオーナーの意向が働いての欠場で、モウリーニョは故意に負けさせられたのでは?」との深読みまで。真偽は兎も角、そんな疑念が働いてしまう程、今のチェルシーはおかしい。そういえばオーナーは最近、糟糠の妻と離婚したとか。ならば、こちらの関係解消もそろそろ...だったりして。

潮時、かもしれない。
やはり、モウリーニョと似た剛腕シェフと思われ乍ら、しかしオーナー様は常にモミ手でお出迎え、決して逆らわず、結果シーズン中に首を切られる事一度も無く、傾いたこのかつての高級フルコース料理店にて思った以上に馬肉がいい味出してるお陰で、今年も何となくまた結果を残しちゃいそうな繁盛請負人カペッロに比べると、まだ青い。

勿論そんな事を世間が幾ら書き連ねても、当のモウリーニョがそれを認める事はないだろう。
今頃は、いつもの様にこの敗戦に対する、みっともない「負け惜しみ」を並べ立てているに時分か。立会人コリーナ氏の手前、得意の「PKを取ってくれなかった」は使えないだろうけど、また「ベストな方が負けた」とか、減らず口を。

でも──、
一生に一度は完敗を認めてみたらどうかね? 
どう見ても君の完敗だよ。


(で、次のお話「ミラン対ユナイテッドプレビュー」に続きます↑)
by tototitta | 2007-05-03 15:34 | サッカー全般 | ▲ TOP
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