(記/なるほ堂 絵/Minaco)
【ナビスコ準決勝2nd 鹿 3-1 熊】
「まだ少し先か」と思っていたら、再びの…しかし新しい満男の戦いはすぐに始まった。
見慣れたユニ姿も、しかし背中には新たな背番号『40』。誰の色も着いていないそれを選ぶ満男の、相も変わらぬ「じょっぱり」ぶりが嬉しい。
懐かしい横断幕もちゃんと、
『40 もっともっと 小笠原』。
──ホント、有り難い事です。
相手は、永遠の“将来が楽しみなチーム”こと広島。
試合前のミックスゾーン。チームメイトと少し離れた所に一人、満男。
そして試合開始。
鹿選手たちは満男の指示を仰がずとも、時にはそれに逆らう様に自分たちで「絵を描こう」としていた。図太さが増した岩政。積極性が光る中後。鹿のカッサーノ、寂しがりやの天才・野沢はまだまだ「気分」でプレーしている感が否めないが、しかしゴールで答えを出した。相変わらずはイバのトラップか。
正直、頼もしい。
そうでなくては──、そうでなくては満男がここに居なかった時間が「何の意味も無かった事」になってしまうから。背番号は5倍になったが、背負い込む重荷は軽い方がいい。
しかし、
時間が経つにつれ、満男の冷静かつ正確なプレーが「チームの中心」に。
強風と、得失点の微妙な展開にブレ始めたチーム、「戦える選手」がまだ足りない。
二枚のセンターバックの前に陣取った満男──、
敵に対しては「さあ来なさい」と。
味方に対しては「俺がチームに落ち着きを与えよう」と。
満男を中心にプレーが、試合が回り始める。
そして、おまけにキャプテンマークも帰ってくる。結果フル出場。
いつのまにか、「全てが満男を経由する」という、以前見た鹿の風景に。
でも、それはそれで嬉しい。居場所があるから。今日ばかりは。
頂点まで、あともう少し。
それにしても、あれ程苦労しても取れなかった「10個目」が、旅から帰ってきた途端にあともう少しの場所にあるというのは、、、なんとも。
++++++
正直、今の鹿島が日本一のチームではない事は分かっている。
しかし彼らが目指すサッカー、叶えようとしているサッカー、それは今も昔も「世界一」だと思っている。それをこの試合で再確認した。
代表や他クラブが当然の如く「身の程」や「時流、効率」に靡く中(それを悪いというつもりは無い)、しかし鹿は勇敢にポゼッションを目指す。例え技量叶わず、上手く行かなくて空回りを繰り返しても、でもそのプレーの折々にて選手たちがピッチに描こうとしているサッカー──バルセロナやユナイテッドをも越える、形容し難いほど物凄いサッカーの「幻の様な風景」が僕には見えるし、きっと多くのファンにも見えているのだと思う。他所様に妄想と嗤われようとも。
そして、それは満男についても。
彼の居場所が何処にあっても、神をも怖れぬ世界一の「じょっぱり」がピッチに描こうとする「世界一のビジョン」が僕には見えるし、それが凄すぎて見えない時もそれを感じる事が出来る。それは世界中の、他の誰も真似出来ないプレーだ。
満男がピッチに帰ってきた。
この上はもっともっと、彼の「目指すもの」が「見える形」として表されます様に。
プレーも、タイトルも。
それを、遠い彼の郷里から後押ししていくのが僕の役目なんだろう。
再び歩み始めた満男を見て、もう迷いは無い。