(記/なるほ堂)
ストライカーは、いつもゴールを見ている。
後方からチーム全体を見る視点ではなく。
──それは自然な事。
この鹿の街で育ち、老若男女全ての人たちに愛されたガンマン。
だが、バーの椅子で銃を磨き、若者たちに決闘の所作を手ほどきし乍ら、
街の平和を見守る日々では、彼の心が満たされる事は無いだろう。
そんな気はしていた。
「13」という死神のナンバーを背中に負った男。
平穏は、むしろ背負う物が多すぎる。
ストライカー=ガンマンの身体の中には、
常に「次の獲物」を求める血が流れているのだ。
それを求め、彷徨(さすら)う時が来たのかい? ヤナギ。
田代の代表入りがきっかけだろうか。
明確に「追い越された」という気持ち。
今ベンチに居ては、再びそこに立つ事は叶わぬとの思い。
カズとのミーティングがきっかけだろうか。(実際あったか知らないが)
あれこそがストライカーの生き方と、感じる物があっただろうか?
本当の彼の心の中を探る事は出来ない。
ただ、「代表>鹿」ではなく、「ゴール>鹿」なのだろうと思いたい。
よしんば、「ゴール>鹿のアジア制覇」でも構わない。
ヤナギはストライカーだもんね。
今の気持ち、僕は許す。
もしそうなったとしても、「シェーン、カムバック!」なんて、言わない。
街を去るタイミングとしては、新しい街で居場所を求めるにも今しかなかったのだろう。
鹿が替わりのガンマンを捜すにも、決意が固まっているならば早いに越した事は無い。
ヤナギが前を向いて出した答えならば、僕も前を向こう。
ルートの時の様に、全てが上手く行く場合も在る。
若い力で鹿が優勝し、ヤナギがもう一度代表のエースストライカーに返り咲く。
──それならば、それでよし。
ストライカーはベンチでは死なず、ただ消え去るのみ。
(気が早いかもしれないけれど、心の準備だけは……)