(記&画/minaco.)
ダニー・ボイルの
『28日後…』('02)は、ゾンビ映画に新時代の“スピード化”をもたらした。とはいえ、ワタシはゾンビ映画にそれ程詳しくないし、元祖ロメロの『ゾンビ』は「怖すぎて」未見だ。ただ何が面白かったって、舞台がロンドンな事。
英国ゾンビ映画では、「どうせ島国だから、俺達見捨てられるんだ」という感覚が根底に流れる。音楽も舞台も、走るゾンビも、そもそも登場人物の閉じた世界観がすべて英国らしい。ロドリゲスの『プラネット・テラー』とはえらい違いだ。
そして、映画は
『28週後…』('07)に続く。監督は違っても、英国テイストは変わらない。
たまたまスペインへ旅行してて難を逃れてた姉弟が、ゾンビ・ウィルスを鎮圧したロンドンへ帰国する。パパは
貧乏人&ダメ男を演らせたら右に出る者無し、のロバート・カーライル。
映画界の最強番付で横綱がスティーブン・セガールだとすれば、カーライルは最弱の前相撲に位置するだろう。貧弱で小男な上、器も小さい。このパパがもう、大変な事になる。
見所は緑の草原を逃げるカーライルと、追いかけるゾンビ集団。走る、走る。このスピード感が映画の肝だ。明るい太陽の下、緑の向こうからぞくぞく迫り来るゾンビ大集団。コレってキートンの『セブン・チャンス』へのオマージュか(そんな訳ナイ)。
草原のゾンビだよ、バンビじゃないよ。そのシュールな画に怖さより感動を覚える。緑に血飛沫の赤が映えるんだワこれが。
弟はレアル・マドリーのユニを着てた(解り易いな)。もしや死亡フラグ?とニヤニヤしてたら、案の定無謀な真似をしでかし、再びロンドンを恐怖のドン底に突き落とすんであった。
姉弟だけじゃなく駐留する軍隊も生き残った市民も皆、浅はかなので「ゾンビを舐めるな!」と言いたくなる。アラン・スミシーにちょっと似た軍人さんだけは勇敢にも戦うのだが、こんなんじゃ所詮人間はゾンビに勝ち目なし。いや、ワタシなんかが居たら真っ先に食われてますが。
制圧。復興。発症。増殖。壊滅。闇と閉鎖空間でのパニック。こんなに暗闇が多い映画は『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』以来ではなかろうか。前作より血糊はボリューム・アップ、スプラッタも大盤振る舞い。気の弱い人は観ちゃいけませんね。ワタシも苦手ではあるけれど。
街中を走り回り、クライマックスには新ウェンブリー・スタジアムも登場する。要は壮大な鬼ごっこである。逃げるが勝ち。といっても、やはり島国なのが哀しいところ。
もし次回作があるなら、きっと
『28ヶ月後…』になりそうだ。
ゾンビのネバー・エンディング・ストーリー。キリアン→カーライル→とくれば、映画のラストシーンからして今度の主演はロマン・デュリスくんか?と妄想する。それなら観たい!