(記/minaco.)
『I'm not there』は、期待通りでした。
6人の俳優が演じるボブ・ディランらしき人物が、交錯する映画。
実は、というか告白すると、ワタシの卒論の殆どはボブ・ディランでした。何だそりゃ。
といっても、彼の曲に心酔する信奉者じゃありません。みうらじゅん氏みたいな青春時代でもありません。
彼の
『Don't look back』*('67)というドキュメンタリー・フィルムが大好きでした。その中で所在無さげにウロウロ歩く彼の手にある大きめの電球(?)が、まるでライナスの安心毛布に見えたものです。
それから、かの有名な
『The Freewheelin'』のアルバム・ジャケットがとても好きでした。
勿論、当時は『All I realy want to do』と『Subterranean Homesick Blues』がお気に入りのナンバーでした。
しかし、何より若い頃の彼の写真が…ワタシのツボだったのでした。いかにもなユダヤ系。
彼は同じくユダヤ系のウディ・アレンやグルーチョ・マルクスと並ぶ、
稀代のユーモリストだと思ってます。
それはいくつもある彼の一面に過ぎないのでしょう。この映画のように。
多分、若い頃の自分も少なからず影響を受けていたんだと思います。ひとつのアイコンだったのかもしれません。そしてある意味「もう一人のチャーリー・ブラウン」として、とても愛おしかった。
やっぱりね、アメリカって
ボブ・ディランとブルース・スプリングスティーンとマーク・トウェインで出来てるのです、ワタシの中では。
ディランの純粋なファンにすればどうなんでしょう。ワタシはコレ大好きです。ずっと観ていたいという気になったのは久しぶり。
それぞれのディラン像が現れるのにちょっとドキドキし、冒頭の『Don't look back』らしきシーンからして、覚えのあるエピソードにニヤニヤしました。ジョーン・バエズが!シャルロットが!
モノクロの粗い粒子とカラーが入り混じった映像の中で、例えそれが女性であっても、黒人少年(ウディ・ガスリー)であっても、全く似てないリチャード・ギアであっても、違和感がありません。
でもケイト・ブランシェットは反則だなあ。出番は少なかったけどベン・ウィショーの顔が好き。一番似てたのが意外にもクリスチャン・ベイルだったけど、彼だけでも物足りない。やはり、6人合わせてやっと「似てる」と言えます。
(余談ですが、ベイルはちょうど突き抜けちゃってる頃のディランでして。
ガチを演らせたら彼はハマる!)
トッド・ヘインズは本当にミッド・センチュリーが好きなんだなあ、というのも解りました。何しろ、ワタシもこの時代に目がないもんで。それ以降って(自分が生まれた時代だけど)、どんどん味気なくなってくるでしょう。
あと、タイトルバックなどのフォントがよかった。予告編も凄くよかった(
コチラ。これだけでも是非どうぞ)。前作『エデンより彼方に』でもそうだけど、監督はかゆい所に手が届く、イイ仕事してくれました。
*Don't look backより『Subterranean Homesick Blues』
↓
http://jp.youtube.com/watch?v=MAbtg9dz5P0
(注 / これは某所に書いた記事を改訂・再録したものです)