(記/minaco.)
この機会にせっかくだから、地元じゃ見られない展覧会や映画を観て来ようか、と思案していたんであるが、ネットで情報を集める中である事に気付いてしまったのだった。
そう、2008-2009年は
日本オランダ年 (ロゴデザインはディック・ブルーナ)。
各地でオランダに関わる音楽・映画・美術・スポーツ…などなど、多彩なイベントが断続的に催されている。
そして、ある考えがひらめいた。
コレを逃す手はない。
ならば、オランダへ行こう。
盛岡では決して出会うことないかの地も、東京なら手の届く所にある。あるワケないけど、あると思えばある。ひょっとしたら、オランダ人もいるかもしれない。会っても「mooi!」とか「ja」しか言えないけどさ。とにかく、心は決まった。
降り立ったのは東京駅。駅舎は改装工事中だったが、赤レンガの建築様式、皇室専用口などはアムステルダム中央駅を模したと言われる程似ている。
<*注>
つまり、
ワタシはアムスに到着したワケだ。ここからオランダを巡る旅が始まる。思いっきり無理があるのは承知だが、強引にそうゆう事にさせてもらう。肝心なのは思い込みだ。
覚悟を決めたワタシはそのまま丸の内オアゾへと赴き、色とりどりの牛達と出会う。
「オランダ COW アート」である。この辺りでは今、
「カウパレード東京 丸の内2008」 というイベントが開かれているんである。
鮮やかなチューリップを身に纏った牛一頭。さすがオランダは牛だらけ。チューリップだらけ。ベタすぎる。
そばにはドイツ・ベルギー・スウェーデン産の牛も居る。何かメッセージを主張するガチ牛も見かける中で、オランダ牛は単に故郷名産物自慢だ。そんなにチューリップが好きなのか。いや、
そんなにオランダへ行きたいのか自分。
止まらない妄想に呆れつつ、乗りかかった船は仕方ない。オランダ紀行はまだ始まったばかりだ。
お次はオランダ旅行には欠かせない存在、観光案内所へと向かう。VVVという略称で知られるその場所は、麹町にあった。正確には
オランダ政府観光局であるが、きっと同じようなものだ。
目的地には容易く着いた。オフィスビル5階にある小さなドアを開けると、ここでもチューリップのロゴマーク。
しかし、専門家ならどんなマイナー地域(北ブラバントなんて観光マップにまず載ってない)でも案内してくれるはず、という期待はあっさり裏切られてしまう。
人が居ない。入り口に沢山のパンフレットが置かれているが、
「窓口で一般のご相談には応じません」とお断りが出てるではないか(企業向けPR所らしい)。エーッ。
意気消沈しながら、それでも集められるだけパンフと地図をゲットしたものの、やっぱりデルフトやユトレヒトがあっても北ブラバントの資料など無かった。そんなもんか。
何だか肩透かしとゆうか、そもそも見切り発車で企画倒れの可能性も出てきた。だがもう後戻りはできない。気を取り直し、混雑が懸念される
「フェルメール展~光の天才画家とデルフトの巨匠たち~」 へ。
なるほど上野公園は
ゴッホの森か(←違う)。小雨降る中長閑な人波を追って、東京都美術館へ初めて足を踏み入れる。
別にフェルメールが好きなワケでもないのだが、今回のハイライトになるかもしれぬメジャーどころ。確かに人は多かった。しかも皆、大真面目にひとつひとつ目を凝らしている。特にオバサマ方の気合の入りようは半端じゃない。冷やかしはワタシくらいか。
美術について語れる素養などないのであるが、フェルメール含め17世紀のオランダ絵画は隙がなく、計算ずくで理詰めに見える。キチンとパースを取って、几帳面かつ厳密に表現する。ある意味トータルフットボールに通じるかも。
司馬遼太郎の「オランダ紀行」で読んだところ、そもそもオランダは貴族制度が無いに等しいので、肖像画は王族でなく当時隆盛を誇った商人に雇われた画家のプロフェッショナル仕事だという。宗教画もカトリックとは違い、題材は聖書の解り易い教訓ものだったりする。要するに教会や貴族の為でなく、成り上がりが自分の家にインテリアとして飾って自慢する為の絵画とも思える。
故に、こっちもまるできれいなインテリアを眺めるような気持ちなのだ。
やっぱ天井高いですねー、床は流行の市松模様ですねー、調度品は質素ですけど窓には凝ってますねー、って
「建てもの探訪」の渡辺篤史気分。でもって、やたら生々しくお金が出てくるのが可笑しい。さずが世界一ケチと呼ばれる国民、金には細かい。
但し、以前ドキュメンタリー映画にあった
「オランダの光」 。この空気感、空の色がオランダ特有。映画の中で「オランダ風景を描くなら簡単だ。地平線を引き、奥へ真っ直ぐ伸びる道を描き、木立を並べ、残りは全部空にすればいい」と言われていて、全くミもフタもない。
そんな訳で、観察力には感心するけど、デルフトよりデン・ボッシュの画家
ヒエロニムス・ボッシュ の方が惹かれるな(時代が違うけど)。デン・ボッシュことスヘルトーヘンボッシュはルートのほぼ地元、南部にはゴッホとかボッシュのような規格外のガチ画家がいるんであった。
さて、長くなるので
「妄想的オランダ紀行」は後編に続きます。果たしてこの先に待つものは。そしてオランダ人は登場するのか。てゆうか、そんなに行きたいのかオランダ…。
<*注>
後で調べたところ、通説だと思ってた“東京駅=アムス駅モデル説”はヤオだったようです。ちゃんと比べると、それほど似てないらしい。ま、いっか。妄想だから。