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イラストレーターMinacoとなるほ堂が、サッカーのこととか、映画のこととか、日々日常に関して、その情熱の総てを地球にぶちこんで叩き付け、戦い挑み、愛を説く日々の記録。
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第十四話『ポンペイ最後の日』
(記/なるほ堂、絵と監修/minaco.)

【#14 Portsmouth 1 - 4 Man Utd】

イングランド南部の港町、ポーツマス……愛称『ポンペイ』。
マヤの預言、2012年を待たずして、その地は最後の時を迎えようとしていた。

発端は08年9月。ウォール街を震源とする世界的地殻変動は、遠く離れたポンペイにも伝わり、彼らの繁栄の象徴であったバブル岳が大噴火。火口より注ぐ噴石、降り積もる火山灰に、今や「プレミア最下位」に沈むポンペイ──。

しかし驚いた事に、街には未だ住人が残っていた。その情報は、逃亡犯チェルスキーを追跡中の我ら赤悪魔署にも伝えられ、さっそく私、ギャリー・ネヴィルを隊長とした救助隊が組織されたのである。

「一寸先も見えない……」

街を覆い隠す、白い噴煙の霧。思わず刑事たちが漏らした言葉は、正しくポンペイの現状を表わしていた。その厚い層を抜け、ようやく住人たちの避難するスタジアム入口に辿り着いた我々。だが、大量の救援物資を手に、一足早いサンタクロースのつもりの我々救助隊に対し、彼らの反応は予想外だった。

「霧の向こうから魔物が現れた! 中に入れるな!」

確かに我々は「悪魔」だが、しかし君らの救助の為に来た旨を説明すると、やがて建物内より彼ら被災者の声が届いた、
「……週末の度、この噴煙の霧(ミスト)の中から現れる怪物たちの手にかかって、多数の犠牲者が出ているのです……」。

なるほど、前監督ハート氏も犠牲になったらしく、建物内にその姿は見えない。どうやら一刻の猶予もならないようだ。我々は彼らに伝えた、
「さあ、外に出てくるんだ。脱出しよう。このままでは隣町のサウサンプトンFCの様に、三部にまで沈むのは時間の問題だ」。

だが、彼らはそれを拒否した。破滅の恐怖に憑かれた住人たちにより、新たな指導者に持ち上げられたユダヤ人アブラムが、「赤い悪魔の声に耳を貸す者は、地獄に堕ちる」と神託を唱えると、客席に集った、彼に煽動された狂信者たちが続き、

「そうだ! 一昨年のFA杯王者を神が見放す訳が無い!」
「そのうち中東の大金持ちが助けてくれるさ!」

……なんという事だろう。早々に鼠もレドナップも逃げ出したというのに、彼らはまだ過去の栄光にうつつを抜かしている。見るがいい、家屋も守備も炎上したポンペイの街。クラブの台所は火の車。黒い溶岩に覆われた街道は、何処まで行けども黒星街道──最早この街に留まる事は、自殺行為でしかないのに。

「多少の犠牲はやむを得ない」

ウェイン刑事が言った。新米パパは、早く帰りたいのだろう。他の刑事たちも、それに頷いた。見れば、実際に抵抗する者はそう多くなく、彼ら呼ぶ所の「アブラム様」とやらに命を受けた11名くらいか。彼らを倒せば、今は連中に盲従する住人たちも、進むべき道に気づくだろう。何度目かの大きな噴火を合図に、闘いは始まった──。

─────────────────────────────

以下、発見された『ポンペイ人の手記』より──。

11月28日(土)15時00分
噴煙の霧の中から現れた『赤い悪魔』の侵入を防ぐ為に、我々はゴール前に人垣を築く事にした。これまでもそうであったように、90分守り切れば連中は去るだろう。この由緒ある町ポンペイが、滅びるはずは無いのだ。

5分
しきりに、我々に外へ出てくるよう呼びかける悪魔たち。その手には乗るか。これまでその誘いに乗る度に、我々は痛い目にあってきた。先週も、先々週も、他所よりの侵略者や火事場泥棒たちに、もう少しの所で我々は「勝ち点」を奪われてきたのだ。

10分
何という事だ! ポンペイ大噴火がもたらした地震により、更にカマボコ状に隆起した我らがピッチ。そのせいだろうか、魔物たちが戸惑い、ミスを連発しているではないか。もしかして、奴らを倒す事が出来るかもしれない。反撃するんだ!

25分
「PK」と、誰かの声が聞こえた。PKとは『PSYCHOKINESIS(サイコキネシス)』、いわゆる『超能力』を指す。あろうことか悪魔はそれを操り、我々の築いた防衛線を容易に破った。やはり、ポンペイはこのまま滅びる運命なのか……。

32分
嬉しい出来事だ! 神は我々にも「PK」を授けた。ありがとう、伸びるユニフォーム。
無論「あの程度で?」と他人は思うかもしれない。だが、このポンペイ、正式名称ポーツマスでジャッジの天秤を誤るのは危険だ。明治三十八年には『日比谷焼打ち事件』が起きている。それ故の、天の「配慮」だろう。見よ、客席に我らの「ポーツマスの旗」が振られている! 

45分
闘いは一時休戦となった。冷静に考えると、本項で引用しているポーツマスはアメリカの都市で、ポンペイはイタリアの様な気もするが、この状況では、誰も冷静になどなれないだろう。我らの運命を司る天も同様だ。何が反則で、何が正しいのか、もう誰にも判らない。このカオスの元凶は、悪魔のリーダー、ギャリーだ。あれが「ネヴィル神拳」か。俺には全てが反則に見えるのに……。

48分
再開した闘い、またもや赤い悪魔により、均衡は破られた。悪魔皇子ウェインの、今日二発目。力の差を見せつけた彼らは、「マンチェスターには君らの為の仮設住宅もある。町を捨て、速やかに勝ち点3を明け渡し、今後は赤い悪魔のサポーターとして生きるのだ」と降伏を促す。だが、このまま降伏する訳にはいかない。我々はこの街で生き残る為に、前監督を自らの手にかけたのだから。

54分
刻々と崩壊するポンペイの街。もはや人は、我ら鎮守の道祖神「ボア天狗様」に、奇跡を託す他無かった。だが、「あれは何?」という子供の声に促された先、俺はピッチサイドでアップする「新種の悪魔」の姿を見た。タコの一種の様に見えて、しかし二本脚。その走る醜さは、同時に壮大な美であり、わずかに残った俺の理性は、それを理解する事を拒否した。まだ、あんな「怪物」が居るのか──。

「もう駄目だ」と、俺は呟いた。俺は正気ではない。早まるな。そうも思ったが、「このまま霧の中の怪物に喰われるくらいなら」と。

自殺行為──すると誰かがまた、「PK」と言った。

─────────────────────────────

……以上で、『手記』は終わっていた。これよりは再び自分、ネヴィル刑事部長に拠る、「休暇中」のボスに宛てた報告書である。

その後、程なくして闘いは終わった。小雨、帽子で何か隠したいウェイン刑事の「ハットトリック」と、胸毛刑事の追加点、宿直当番クスチャク警備員の好守、ポール師匠の自制によって我々は勝利した。ポンペイの街はやはり最下位に沈んだままだ。

力づくの説得虚しく、我々は住人を救う事は出来なかった。彼らは街と共に沈む事を望んだ。街の楽隊は、住人の心を鎮めようと最後までその演奏を止める事無く、沈み行くポンペイの街に殉じた。そう、タイタニックの楽隊のように。

現場では、彼らを悼みながら、地中深く沈んだ街の発掘作業が行われていた。我々は石膏を流し込み、多くの犠牲者と、またそこに古舟があった事を発見した。戦闘開始から60分、我々を「悪魔」と誤解した住人たちが、その攻撃から逃れる為に引っ張り出したものらしい。だが、かつてナイジェリアから多数のサッカー選手を乗せて欧州に渡ってきた舟は、もはや老朽化著しく、ポンペイの住人を救う事は出来なかった。その舟を、人は「カヌー」と呼んだ。

その頃、ポンペイの最後の生存者が送ったらしい『最後の電信』が、世界に届いていた。恐らく「もうだめ、ポンペイ」と打とうにも、緊迫した状況に上手くキーを押せなかったのだろう。その文面にはこうであった。

「もうだめぽ」
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to be continued...



次回、第十五話『お歳暮にはウェストハム』、
次こそワンダー刑事の活躍に、どうぞご期待下さい。
(タイトルは予告無く変更される場合があります)

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このドラマはフィクションです。実際の人物・団体・
実在するポーツマスFCとは、一切関係ありません。
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ポニーキャニオン


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by tototitta | 2009-11-29 21:48 | Manchester United | Comments(4) | ▲ TOP
お知らせ


【 tototitta!よりお知らせ 】


突然、見慣れないデザインに戸惑った方がいらっしゃいましたら、ごめんなさい。
ここは tototitta! です。

この度、ブログスキンを一新いたしました。

ご意見、ご感想、またはどこかに不具合でもございましたら、どうぞお知らせ下さい。そして、スキン職人なるほ堂に温かい労いのお言葉を!

そんな訳で、今後ともどうぞよろしくお願いします。
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by tototitta | 2009-11-27 19:53 | 小ネタ | Comments(10) | ▲ TOP
シンタクラースと白馬
(記/minaco.)


11月、オランダではシンタクラースの季節。

シンタクラースさんはスペインからやって来てオランダ中を巡り、よい子にプレゼントを配る。白馬に乗って現れるシンタクラースさんの為、小さな子供がいる家々では飲み水や人参、そして欲しい物リストを入れた靴(靴下ではない)を用意して待つのだとか。まあ、プレゼントを置くのは親御さんなんだけど。

そんな折、ルートもスペインでよい子達にプレゼントをしたそうである。そう、こちらでは白馬がシンタクラースさんになったのであった。

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ルートは10年前から、SOS-Children’s Villages という慈善団体の大使を務める。ここは、様々な事情で親を失った孤児達がより良い未来を築けるよう、世界各地に共同生活をする家(Villages)を提供している。

1998年のU-21遠征でブカレストを訪れた際、このヴィレッジの生活を目にしたのがきっかけで、ルートは活動を支援するようになったという。慈善事業に積極的なジダンの大ファンである彼は、やがて自分達の財団を作る事に。

2004年に地元で挙げた結婚式で、ルートとレオンティンは招待客に提案した。
「お祝い金は一切いただきません。その代わり、基金への寄付を募ります」

とゆう訳で、(ピーター・ファン・デン・ホーヘンバンド水泳選手やファーギーも含む)各位のご厚意に支えられ、"Friends of Ruud & Leontien"財団の活動が始まる。公式サイト(トップからアテられます)。

2人はSOS-Children’s Villagesと提携し、これまでに各地のヴィレッジを援助してきた。嫁はモロッコで取材した写真とレポートを雑誌に寄稿した事もある(原稿料はチャリティへ)。そして2007年には、新たにメキシコで“Friends of Ruud and Leontien House”を建設。ルートは子供達にビデオ・メッセージや沢山のプレゼントを贈った。

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さて、今回は嫁を伴い、マドリッド近郊のヴィレッジに住む子供達を訪問したそうである。一緒にランチを取った後は、みんなと交流。「フットボールは好き?」と質問されると、「いいや、本当は好きじゃない」と答えたルートだが、そのくせ喜んで子供相手のPKごっこに興じてた。ダッチ・ジョーク?

更に、パートナーシップを結ぶ子供服ブランドVingino (オランダ)と協力し、カレンダー用フォトセッションも行われた(一部収益はヴィレッジに寄付)。撮影は勿論、嫁。

    「とてもリラックスして、楽しんでポーズを取ったよ。子供達もVinginoの服が気に入ったみたいで、カメラに対して凄く自然だった」(ルート)
    「子供への家族の影響力の強さを信じているので、このコンセプトは私達に訴えかけるものでした。子供というものは温もりや安心を与えられなくてはならない、と思っていますし、それは後々の為に大切なのです」(レオンティン)






それにしても、子供と接する時のルートはいつも親戚の子みたいに躊躇なく話しかけ、濃厚に世話を焼く。馴れ馴れしいのか、いやさすが長男体質と言うべきか。以前エドさんの息子ジョー君と話し込むのを見た時も、長年の親友みたいだったワ。
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by tototitta | 2009-11-26 21:30 | Ruud van Nistelrooy | Comments(2) | ▲ TOP
第十三話『兄より優れた弟など存在しない』
(記/なるほ堂、絵と監修/minaco.)

<<おさらい:前節チェルシー戦を『12モンキーズ』風に>>

俺は未来人──君らが「現在」と呼ぶ時代から、100年後の世界よりやって来た。

タイムマシンが実用化され、かのボス・ファーギーも世界遺産オールド・トラッフォード正面のバスビー像の横でモニュメントとなり、ただ一人、ライアン・ギグスだけが現役を続ける未来世紀マンチェスター、2109年の赤悪魔署。その地下刑務所に囚人として捕われていた俺は、釈放と引き換えに、過去の「ある事件」の調査に派遣されたのだ。

2009年11月9日、0対1で敗れたチェルシー戦で何が起きたのか?──それを調べるのが、俺の任務だ。手掛りは、当時の刑事の声が納められた古い録音テープ。雑音の向こうで、その声は『12(トゥエルブ)……!』と、叫んでいた。

そして、こう書かれた当時の貼り紙も、『やったのは、俺たちだ! 12チェルスキーズ』

一度目のタイムスリップは失敗し、俺は1958年のミュンヘンへ。墜落現場、数少ない生存者を救出するハリー・グレッグ……そして、傷ついたサー・ボビー。

二度目も失敗だった。そこは事件より一週間前のロンドン。だが、精神病院に収容された俺は、そこで一人の男と出会った。奴は言った、「俺たちは12チェルスキーズ、今度デカい事をする」。「12」とは、つまり「サポーター」の事だったのだ!

三度目で、タイムスリップは成功した。再び病院に収用されそうになるも、あの墜落現場の写真に映る姿が、俺が「タイムトラベラー」である証明となり、遂に俺は事件当日のスタンフォード橋へ辿り着いた。赤悪魔署の捜査が始まる中、俺はスタンドに居るはずの奴を探した。そして、ようやく見つけた俺の目は、奴の手の不審な動きを捉えた。何を? 爆発物? いや違う、あれは──


歯ブラシだ。奴は歯を磨き始めた。彼ら『12チェルスキーズ』は、テロリスト集団では無かったのだ。ただの面白サポーターだ。では、この戦いで赤い悪魔を敗北に導いたものは一体? 普通に戦って負けたのか、いやそんなはずは無い。その時俺の目に、判定に怒るスコッチ刑事の姿が映った。俺は気付いた──12人目の敵、それは審判だったのだ。真犯人の凶行を阻止せんとピッチ内に躍り出ようとした俺を、警備員の銃弾が射抜いた。スローモーションで倒れる俺の耳に、ルーニーの叫びが届いた。

『12(トゥエルブ)……!』

俺には悲劇を止められなかった。このまま歴史が変わらないならば、奴らの次の目的地は、18日のフランス……許してくれ、オシェイ。だが、こうしてフットボールの「12番目の敵」の正体を突き止めた俺の命懸けの働きは、決して無駄では無かったはずだ。後に続く「救済保険業」の未来人が、「もう審判の曖昧な判定で左右される様な、後味の悪い試合はご免だ」という皆の願いに応えてくれるだろう。それは、未来の君かもしれない。落ちゆく瞼、その目には俺が救った、この素晴らしきフットボールの世界。エンドロール──サッチモの歌が響く、

I see trees of green red devils, too I see them bloom for me and you
And I think to myself "What a wonder owen !"
緑の芝 赤い悪魔 あなたとわたしのために咲き繁る
そしてわたしはひとり想う 「なんて、オーウェンはワンダーなのだろう!」


以下本編↓



【#13 Man Utd 3 - 0 Everton】

男子の生存率が1%といわれる修羅の国、エバートン──
赤悪魔署ウェイン刑事の生まれ故郷でもあるその地を牛耳るのは、モイーズ組長率いる指定暴力団『エバートン組』だ。だが、近年は総会屋の如くビッグ4の足下を脅かしていた彼らも、離脱者相次ぐ昨今はシノギも思う様に行かず、今や組織とは名ばかりの、単なる無法者集団、ひいては珍走団『獲罵悪頓(エバートン)』に成り下がっていた。

耳を澄ませば、何処でボス・ファーギー不在を聞きつけたか、赤悪魔署管内に迫り来る、彼らの軍勢の嬌声──

「ヒャッハー! 汚物は消毒だ〜!!」

………
さて、「俺」がこうして懐かしいスタジアムに密かに舞い戻った理由は、単に連中の逮捕を見物する為ではない。この闘いに隠された真の意味が、俺をここへと呼び寄せた。そう、ギャリーとフィルのネヴィル兄弟因縁対決、この俺が見逃す訳にはいかない。

遥か以前──当時まだほんのガキだった俺は、そのすぐ間近で、彼ら兄弟が互いに凌ぎを削る様子を見てきた。それは、余りに凄まじい光景だった。なぜならネヴィル家に生まれた彼らの宿命は、その師父ネヴィル・ネヴィル(本名)を開祖とする一子相伝の暗殺拳『ネヴィル神拳』の伝承者となる事だから。長兄ギャリー、次兄フィル、そしてフィルの双子の妹トレーシー……天は、なぜ伝承者足り得る三人を同じ時代に生んだのか?

トレーシーは兄たちと争わず、謎の競技ネットボールの伝説となり、フィルは長兄との伝承者争いに敗れ、ユナイテッドでのキャリアを封じられた。決してフィルが弱かった訳では無い。彼ら兄弟の『ネヴィル神拳』は、アンリの様な丸見えの徒手拳法と違う『暗殺拳』ゆえ、多くの人々がその威力や存在にすら気付かず、素人目には単なる「フットボールの風景」にしか映らないが、しかしその代表59兜が示す通り、フィルもまた優れた武芸者であった。

だが、長兄ギャリーの繰り出す『ネヴィル千手殺(審判に見えないように秘孔を突き、敵が一瞬動けなくなる技)や、『究極奥義・ネヴィル無想転生(己が反則したにも関わらず、敵の反則の様に見せかける技)の前に、両者の力量の差は歴然だった。フィルの突然の出奔、あれは一子相伝の武門の宿命だったのだ。

しかし、二人の真の闘いはそれからだった。

荒野へ逐われたフィルは修羅の国エバートンに漂着し、やがてその拳の恐怖で指定暴力団『エバートン組』のゴロツキ共を制すると、彼らを率いる将として再び長兄に挑み始めた。

「俺の名を言ってみろ!」「かつて弟と呼んだ男……フィル!」

幾度と無く彼ら兄弟が対決する度に、海は枯れ、地は裂けた。そして今日も──

………
だが、この日のオールド・トラッフォードの荒野に、彼ら兄弟の姿は無かった。

聞けば、次兄フィルは各地の名だたる「強敵(とも)」との闘いに傷み、また長兄ギャリーはカーリング杯で、「我が退場に一片の悔い無し!」と繰り出した「ネヴィル百裂脚」により、三死合の出場停止処分中という。しまった、久しくこのトップリーグの地を離れていた俺は、よく事情を呑込んでいなかった。なお、代わりに何故か出勤停止中のボスが、「観客」としてちゃっかり参戦していた。いいのか。

しかし、互いに主将を欠くにも関らず、獲罵悪頓の構成員たちは「フィル様の為に!」と息巻き、また赤悪魔署の刑事たちも同様──さながら兄弟代理戦争の態で、闘いは始まった。

─────────────────────────────

先ず俺の目が行ったのは、主力を欠く赤悪魔署の「守」。「オバさんパーマ」的カツラで女装し、油断を誘うフェライニ構成員を、「おまえのようなババアがいるか」と一蹴する茶色刑事。また、オランダのスキンヘッズ・ハイティンハを、「お前の血は何色だ」と怒りの剛拳で返り討ちにし、その血の色を確かめる鼻曲り刑事。将ギャリーを欠くとも、しかし「退かぬ!媚びぬ!省みぬ!」の精神──千年の歴史持つ『ネヴィル神拳』の至言であり、赤悪魔署「三ぬ運動」の標語であるそれは、確かにそこに息づいていた。

そして「攻」。Aガルシア刑事を本業の映画撮影で欠く前線には、かつてその父も、かの地エバートンの「名も無き修羅」であったワンダー刑事が入る。獲罵悪頓の珍走をゴール前に釘付けにするルーニーとワンダー、即ちエヴァトニアン2トップ。レスコット構成員がシティ移籍という悪のエリート街道を歩み、守りに不安のある獲罵悪頓の壁を、赤い悪魔が打ち破るのは時間の問題であった。

そして34分、悪魔戦士ハイランダーの血が完全に覚醒したスコッチ刑事が敵を射抜く。採用当初、「色んな部分で、チャドウィックよりマシな程度かしら」という評価を、今や完全に覆した。許して。

………
しかし、敵もさる者。研究マニアのモイーズ組長は、後半の構成員たちに指示を与えた。ギャリーの代理を務めるラファだか、ファビオだかを攻めろ、と。確かにラファだか、ファビオだかの守りは、門前の小僧として覚えた付け焼き刃拳法。前半に「ネヴィル千手殺」の真似事でカードを貰ったラファだか、ファビオだかは、確かに弱点だ。

だが、赤悪魔署は冷静だった。ただでさえ他人の三倍働くスコッチ刑事を、今日は更に荒く使って右SBへ。まるでファーギーが直接指揮をしているかのような、臨機応変なポジション交替だ。攻めのポイントを失った獲罵悪頓、中盤の核を欠く彼らの攻撃はことごとく赤い壁に跳ね返され、「効かぬ……効かぬのだ。フィルが病いに倒れていなければ……」と、何故か涙するフレッド君(着ぐるみ)。流れは再び、赤悪魔署へ。

幾度も敵守備を翻弄する胸毛刑事、「我がドリブルは我流! 我流は無型! 無型ゆえに誰にも読めぬ!」と、雲を掴むが如く、敵はその動きを捕まえる事が出来ない。確かに我流は守に転じて威を失うが、それを補って余りある技量である。また黒満男刑事も奮戦、その活躍に人々からは惜しみない拍手──そう、悪いのはアンリであり、審判であり、フランスでは無いのだ。

67分、キャリック砲が炸裂。75分にはエクアドル刑事も続いた。珍しく笑顔を浮かべる、エクアドル刑事。「あまり活躍すれば、苦手なインタビューが……」と欝になるらしいポール師匠譲りの、あれが渾身のセレブレーション。締めは、クラブハウスの植木の水やりと洗車のバイトを終えたおベルたんが、何かよく判らない踊りで会心の試合に花を添えた。

もはやこれまで……獲罵悪頓の構成員たちは敗北を悟り、天を見上げた。そして、

「死兆星!!」

天にその星を見れば「放出、引退、二部落ち」などの宿命が待つという星を、彼らは見た。今ではすっかり茶髪にやさぐれたサハは、赤悪魔署での最終年に続き、再びである。そして彼らは審判の笛を聞いた。その意味は即ち、「おまえはもう死んでいる」である。笛を聞いた悪党たちを待つのは、凄惨な末路のみ──

「ひでぶッ!」「あべしッ!」「やくぶッ!」

─────────────────────────────

所詮、彼らは赤悪魔署の敵ではなかった。

赤悪魔署の真の敵、それは現在5ポイントのアドバンテージを持って逃走中の指名手配犯「チェルスキー容疑者」、ただ一人。だが、例えどんなに逃げたとしても、必ずいつかは捕まるのだ。整形しようとも、大阪の工事会社に潜伏しようとも、例えフェリーで逃走図ろうとも。

ネヴィル兄弟との再会を果たせなかった心残りを覚えながら、俺は懐かしいオールド・トラッフォードを後に。だがその時、俺の耳に帰り際の刑事たちの声──

「兄より優れた弟など存在しない!」

ギャリーか? いや、リオ・ファーディナンドであった。彼もまた『兄より優れた弟など存在しないの会』の、会員であった。しかし、その言葉に頷くフレッド君(着ぐるみ)から凄まじい闘気を感じた俺は、その「中の人」に確信を覚えた。彼に向け、俺は言った。

「久しぶりだな、ギャリー」

遠い昔、自ら口減らしのためにオールド・トラッフォードを出奔した俺。巡り巡って今では俺も、二部とは言え「新しい城」の軍勢を預かる身だ。ほんのガキだったあの頃とは違う。俺はフレッド君の中の人に告げた──もう一度、今度は「強敵(とも)」として赤い悪魔に挑みたい、と。

すると、フレッド君は被りを取り、そこに現れたのはやはりギャリー・ネビル。
彼は俺を懐かしむように、言った。

「……男の顔になったな、バット」

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to be continued...



次回、第十四話『ポンペイ、最後の日』、
次こそワンダー刑事の活躍に、どうぞご期待下さい。
(タイトルは予告無く変更される場合があります)


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このドラマはフィクションです。実際の人物・団体・
実在するエバートンFCや、現存するいかなる拳法とも、
一切関係ありません。
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by tototitta | 2009-11-23 00:00 | Manchester United | Comments(6) | ▲ TOP
マンチェスター居酒屋対談2006〜後編〜
(記/minaco.)

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ピエール・ファン・ホーイドンクさん
前編

引き続き、仲良しのファン・ホーイドンクらと居酒屋でフットボール談義に白熱するルート。心なしか、次第に友人も酒癖の悪いルートに引いてきた模様。(ちなみに普段はワインを嗜む程度らしい。昔、慣れない高級酒を口にしてブッ倒れたとか)



──(H&H) どの監督なら君を動かせるんだい?
 ボビー・ロブソンはいつも自信を与えてくれたな。時々試合に出られなくても、“すべてを勝ち取れる訳じゃない”って言うだけさ。気休めじゃなくて、彼は本当にそう思ってたんだよね。マルコ・ファン・バステン?そいつは難しいな。

時々悩むんだ。ベンチだとか、1週間ゴールが無いせいじゃない。単純な疑問だよ。自分に何が出来るか解ってるし、実際出来るさ。でも俺はまだベッドで横になって“戦うべき状況”を考えてる。

──(ファン・ホーイドンク)自分の能力は知ってるだろ?どうせ立ち直るんだろ?俺はよくFKをミスするけど、でも次にまたFKを得たら躊躇わないぜ。やるしかないんだ。それでも毎度パーフェクトには行かないさ。

 そりゃ解ってるよ。でもお前みたいには思えないんだよね。お前が羨ましいよ。この悩みが付きまとうんだ。俺が常に必死に働く理由でもある。そうゆう悩みを持つから、それを打ち負かそうとする。

前以って自分に凄く気合入れるのは、試合中に絶対悩まないようにする為なんだよ。俺は後で自分を責めたりしたくないんだ…。

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【分析】
    H&Hは温かい心遣いを受けて帰ってきた。ルートはゆっくりとした話し振りで、さほど退屈でもなかった。彼はピッチ外で理想的な娘婿に見える。けれどもバカな雑誌を読んだりしないので、記事が彼に影響を与える事もなく、何の批判も干渉出来ない。後にも先にも、彼自身が最大の批評家なのだ。

    彼の特別な資質に疑いはない。だが、常にもっと完璧なものを探している。すべての偉大な詩人、作曲家や画家は、人生において最高傑作は2つか3つしか作れないと知っている。それでも、彼らは探し続けるのだ。

    体中を流れるフットボールへの愛。ザ・リアル・フットボール。
    不運にも彼は、愛なきフットボール世界に占拠されている。
    休日にも拘らず彼に会えた事は、何という冒険だっただろう。

    〜The End〜



オイオイ、終いにゃドンクさんに励まされちゃって…。全く、酔っ払いガチの巻くクダは手に負えんw

今頃何故こんな思い出話をするのかとゆうと、それは現在マドリーでの状況もまた、決して明るいものではないからなのだ。

勿論当時と違って、政権交代したマドリーにおいては予想通りの展開とも言え、さすがに本人も「俺はバカじゃねえ」と自分の置かれた立場をちゃんと承知してるらしい。けれど、いくら強気な事を言っていても、ワタシはこの夜の事を思い出す。

愚痴の聞き役ドンクさんはいないけど、あの頃も今も何故かロンが居る。ルートに言わせりゃ(言ってないか)「フットボールの××」塩とガチが共存できない仕組みは変わらない。

本当はもっと早くこのエントリを上げるべきだったかも。何せ南アW杯を目指すルートなので、事は早急に動きそうな気配なのだ。ローマ、スパーズ、フルアム、リバポー(え!)にガナーズ事務所(ええ!)まで、冬に開く市場の噂話が届く。4カ国得点王も魅力だけど、エドさんの待つイングランドに帰るのも有力な選択肢だろうな。

確かに、現代フットボールは愛なき世界。兎角、この世は塩に塗れている。如何にしょっぱかろうと、倒すべき相手や遂行すべきミッションがあるならば、それで良い。バットマン(@『ダークナイト』)もそうだった。ミッキー・ローク(@『レスラー』)もリングでしか生きられなかった。ストライカーは畳の上じゃ死ねない。

ガチには、ガチ発散の場が必要なのだ。
思い切り闘える居場所が。
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by tototitta | 2009-11-20 20:56 | Ruud van Nistelrooy | Comments(8) | ▲ TOP
マンチェスター居酒屋対談2006〜前編〜
(記/minaco.)


ルートの完全復活を待ちつつ、思い出話をするシリーズ。
今回お送りするのは、【マンチェスター居酒屋対談】です。

時は2006年、春。
カーリングカップ決勝を機にスタメンを外され、ファーギーとの確執が噂されたルート。勿論当人は真相に口を閉ざし、ただ途中出場を甘んじて受け入れていたけれど。

オランダメディアでも、Voetbal Magazine誌が逸早く現地へと飛んだ。そして芝居掛かった「潜入取材」を試みる。ラウオル・ヘーチェ記者とピエール・ファン・ホーイドンク選手(2人揃って自称H&H)が渦中のルートを直撃するというもの。

まあ、マンチェスターの居酒屋で呑みながら雑談するだけなんだけど、記事は大仰なストーリー仕立てになっている。例えばこんな感じ。
ウォーターゲート事件を暴いたウッドワードとバーンスタインはもういない。だが今、有名なジャーナリストコンビがルートに迫る!独裁者ファーガソンによってベンチへ追いやられた彼の真実とは如何に?!
そんなネタ企画にもかかわらず、ガチは思い切りガチだった。以下、その暴走ぶりをたっぷりと振り返ります。
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ピエール・ファン・ホーイドンクさん



【試合開始】
マンチェスターのとあるパブでルートと密会した、「潜入記者H&H」。少々のワインなどを酌み交わしつつ、話を切り出す。
──(H&H) 訊いてもいいかなルート。ベンチに座ってるのは解せない?
ルート(以下R) 別に。監督がする事は解ってるよ。サハはよくやってるし、俺はいつかチャンスを掴むつもりさ。

──君はVan The Benchmanとしてマンチェスターに来たんじゃないぞ。
 監督が決める事だよ。

──誰がボスか君に示してるんだと我々は思うが。
R そんな風には思ってない。監督が俺だけをそう扱ってるんじゃないし、他の選手に対してもそうだよ。

──サハは良いよ。でも、君はもっと良い。
 トップクラブじゃ時々、他の選手の為にスペースを作らなきゃないのさ。

──我々は君をどう捉えればいいんだい?
 俺はチームのすべての事が頭に入ってるんだ。皆が何試合プレイしたか、何得点したか、サブは…って、いつもかなり正確に覚えてる。
俺の夢は200ゴールする事だった。もう既に148点獲ってるから、それは可能だよ。150点以上得点したのは過去7人しかいないんだ。俺は歴史を作るのが好きってゆうか、歴史の一頁になるのが好き。ここには凄い歴史がある…。先週、今はもうゴールするチャンスは少ないって気付いたんだけどね。

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【夢はまだ生き続ける】

──何が君を良いストライカーにさせたのかな?
 状況を判断するのが得意なんだ。どこに誰がいるか周りを見続けて、原則的にベストな動きを決める事が出来る。それに、俺は右足をよく使うだろ。凄く簡単に聞こえるかもしれないけど、良いシュートを打てるって事。すべての選手に良いシュートを期待しても、多くにそれがある訳じゃないよ。
アルコールが回ってきたのか、次第にルートは饒舌となる。
 オランダで俺はそれ程良い選手だと思われてなかったと思う。もっと若い子が沢山ゴールしてたし。よく解んないけど、でもそう感じてたんだ。

俺はだんだん悪くなっていきそうで怖かった。股抜き合戦や引き篭もりフットボールがすっかり嫌になりそうだった。っつうか嫌だったんだ。トータルフットボールの絶滅だよ。フットボールに“トータル”なんて何も無くなっちまう。

フットボールは細かいトリックがすべてだと思う選手が次々に出てきやがる。そいつらがもし股抜きでプレイ出来るってんなら、そりゃもうシアワセだろ。フ ッ ト ボ ー ル の 恥 だ ね !
どんどん怒り出す。こいつをどうやったら静かにベンチに座らせておけるというのだろう。
股抜きという言葉が彼をここまで極端に怒らせるのか?
 アフェライ(当時PSV)とかが気になるんだ。常にフリーでいて、でもって常にボールを持てるってんなら良い選手だよな。ジダンはフットボールに至高をもたらしたね。彼の動き、バランス、洞察力、俺はその凄さを享受できる。それがフットボールってモンだよ。

──アーティストみたいに感じるのかい?
 それどうゆう意味?

──誰でも基本や経験を高いレヴェルで持ってる。アンタッチャブルなものにさせるには、何が違うんだろ?広告的価値はクリエイティヴィティかな。ピカソは彼が最高の時に何をすべきか知らなかっただろ。
 もし正しい方法、相応しいタイミングでボールに触れれば、それは凄く美しいんだ…相応しいスピードや場所でさ…。多分、画家や作家によくそんな時があるのと、自分の感じる瞬間は似てるんじゃないかな。ボールが来た瞬間、瞬時に感覚で何でも解るんだ…何も考えずに、同時に高い集中力で。

── いいね、全く芸術的な資質だよ。でもレアル・マドリーは芸術家が沢山居るけど、結果は最高傑作じゃない。
 (落ち着き払って)多分、赤ばっかり、とか間違った絵筆なんだろ。


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〜後編に続く〜
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by tototitta | 2009-11-18 22:10 | Ruud van Nistelrooy | Comments(2) | ▲ TOP
ジャジィな気分で聴く音楽シリーズ番外編
(記/minaco.)


ワタシにとってエバーグリーンなバンドを5つ挙げるとしたら、Talking heads、The SmithsとThe Sone Roses、そしてR.E.M.、最後にThe monochrome set……となるでしょう。
いや。しまった、The Woodentopsも入れなきゃ。つまり6つ!!

勿論好きなバンドは他にも沢山あるけど、最も音楽に敏感だった頃の自分にジャストフィットしたのが上記なのです。

当時、UKのラフ・トレードとチェリー・レッドというレーベルのCDを随分買い込みました。今も昔の音楽ばかり聴いていて、全く飽きない。中でもモノクローム・セットはマスト・アイテム。

ビドの浮遊する声、捻れた旋律。どれもがワタシのツボ。彼らの音楽をかつてアンディ・ウォーホルが「ベンチャーズとヴェルベット・アンダーグラウンドを足して2で割ったよう」と評したそうですが、全くその通りです。

まあ、「アングラなロカビリー」ってところでしょうか。更にビドがインド人とゆう事もあって、そこに時折インド音楽のエッセンスまで混じってるような。

ところで先日、チェリーレッド30周年記念に再結成ライヴをやった映像を観たら、ビドがかなりおっさんになってて、声も衰えてたのが軽くショックだったな…。今は何をしてるのだろう。


ええ、タイプですとも。

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by tototitta | 2009-11-15 19:40 | Music | Comments(4) | ▲ TOP
スコットランドを思う映画『Dear フランキー』
(記&画/minaco.)


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常々、スコットランドは岩手(主に南部藩)と似てるような気がしてた。

ネス湖のネッシーと、遠野の河童。古城の幽霊伝説と民宿の座敷童子伝説。ハイランダーと蝦夷。ロブ・ロイとアテルイ。スコッチ・ウイスキーと、南部杜氏。労働党支持者が多数派のスコットランド、選挙でいつも民主党が圧勝する岩手。更に、盛岡の手織製品ホームスパンはスコットランドがルーツとか。

気質だって通じるかもしれない。虐げられた歴史による自虐、権力に対する反骨心。お世辞や虚飾が苦手。アイリッシュの持つパッションに比べりゃ地味だけど、かなり頑固で強情ッ張り。

先日観たのは、そんなスコットランドの寂れた港町を舞台にした、良い映画でした。
『Dear フランキー』('04)。
ママとおばあちゃんと一人息子のフランキーくんは、各地を転々とするうちにここへ辿り着いた。フランキーくんは難聴なので手話を使う。楽しみは、まだ見ぬ船乗りのパパとの文通。パパは旅先からいつも美しい切手を送ってくれる。

だが本当は、パパは船乗りじゃない。その手紙はママによる優しい嘘なのだ。大人の事情など知らぬフランキーくんは、パパがこの町に寄港する日を楽しみに待っている。嘘をつき通す為、ママは見知らぬ男をパパに仕立て、息子に会わせようとする──

寒々とした海辺。耳慣れたスコットランド訛り。見覚えあるリンクスの芝生。フィッシュ&チップスの店。家の中や人々の装いなど全体的に茶色っぽい。妙に郷愁を抱くような暮らしぶり。

スコティッシュって親切というか、世話好きなんだなあ。初対面だと無愛想なのに、みんな面倒見がよい。頼まなくても余所者の家族に親身になってくれる。これがアメリカ映画だったら、ママ1人で必死にパパの代役を探すところだけど、すぐお隣さんが紹介してくれるのが凄い。

そういや、岩手でも。先の菊池雄星くん(花巻東高・盛岡出身)のドラフト騒動の際、県民は皆「おらほの息子」同然に気を揉んだ。彼が会見で涙した時にゃ「あんたな優しい子を泣がせるどは…」とハラハラし、慣れない喧騒に戸惑った。結果、西武で良かったなや。やはりスコティッシュも岩手人も、そうゆう性分なのかな。

さて、果たしてフランキーくんは現実に気付くのか…って展開は、先が読めそうで読めず、最後には意外な真実が待っていた。説明しすぎない映画だし、映画は説明しすぎない方がニュアンスが広がる。殆ど声を発しないフランキーくんだからこそ、秘めた感情が伝わるのだ。

英国映画の子役は大抵が幸薄い役柄で、どこか冷めてる感じが逆に健気。また、ブレイクする前のジェラルド・バトラー(スコティッシュ)が出ていて、無骨な船乗りによく似合う。彼の役名「ストレンジャー」ってのが良いなあ。

厳しい現実に対し、大人も子供も精一杯頑張ってる。ママはやはり頑固で、自分なりに様々な問題に立ち向かう。フランキーくんはいじめっ子にも動じず、いつしか味方に付けてしまう。強情でタフな姿勢が清清しい。

ワタシは現実に少しだけファンタジーが混じってる映画が好き。英国映画ではあまり安易な救いを求めない。そもそも彼らは幸せを眼の前にしても、遠慮がちだ。だからドラマティックな変化などないけれど、やがて人々が助け合い、ほんの少し幸福に向かう。ヘヴィな設定なのに、とても心温まる余韻が残った。
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by tototitta | 2009-11-12 21:42 | 映画 | Comments(4) | ▲ TOP
第十二話『市民チェルスキー』
(記/なるほ堂、絵と監修/minaco.)

【#12 Chelsea 1 - 0 Man Utd】

20XX年某日──
世界数多の赤悪魔信奉者たちの耳目がスタンフォード橋の決闘に集まった2009年秋から、遠く半世紀余りが過ぎたその日──倫敦の暗く荒廃した大邸宅『チェルスキー城』の主であり、かつての石油王であるロマン・油モビッチ氏は「アナタニモ チェルシー アゲタイ」という謎の言葉を残し、その波瀾の一生を閉じた。映画会社では彼の生涯をまとめた作品の製作が進行していたが、その出来は芳しくなく、氏の最後の言葉に焦点を絞るように指示を受けた我々は、生前の関係者たち(……その殆どは高齢であり、既に鬼籍の方も少なくないが)を歴訪する事になった。

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先ず我々は、当時彼の側近であったケニオン氏を訪ねた。見舞う人など殆ど無き様子の、粗末な介護老人ホーム、薄絹のカーテンで仕切られた大部屋のベッドに横たわるケニオン氏は、我々を見るなり全てを悟ったのか、涙ながらに「ユナイテッドを裏切った上に、『2014年にはチェルシーがユナイテッドに取って代わっているだろう』などと、大それた事を言って申し訳ありませんでした」と、何度も土下座して詫びた。そこに、倫敦で油モビッチ氏が栄華を迎えた折から、その凋落が始まった09年10月末まで、組織の敏腕金庫番として鳴らした当時の面影は無かった。

事情を呑込んだケニオン氏は、ロマン・油モビッチの実像について、訥々と語り始めた──

1966年、旧ソヴィエト連邦サラトフに生まれたロマン少年は、3歳にして両親を亡くし、孤児として育った。やがて成長し、ビジネス界に打って出た彼は、ソ連邦崩壊前後の資本主義化の波に乗り、新興財閥の一人として石油取引業で巨万の富を築く。

しかし03年、ポスト・エリツィンの反動的保守政権が新興財閥への弾圧を始めると、それを恐れた油モビッチ氏は、倫敦の老舗製菓店「チェルシー」を買収し、そこを己の身を守る城とした。グリコ乳業「プーチンプリン」への対抗には、明治製菓「チェルシー」という閃きである。無論、バターキャンディーの生産販売は表の顔。実際の生業は、暴力による弱者からの「勝ち点3」の取り立てであり、倫敦の仄暗闇を牛耳る彼らロシアン・マフィア『チェルスキー一家』を市民は大いに恐れ、また金で市民権を買った油モビッチ氏を、人々は「Citizen Kane(金)」と陰口した。

だが、それら反感は一方にあれど、新生『チェルシー』は着実に国内菓子売上げ一位を記録し、油モビッチ氏も故国の政権と良好な関係を築く事に成功した。しかし、いつ彼らの気が変わり、この倫敦で毒殺されたリトビネンコ氏のような目に合うかも判らない──当時、油モビッチ氏の胸中にあったのは、成功と裏腹の、周囲への「猜疑心」であったという。ケニオン氏は言った、「最も有能な部下であったポルトガル人ジョゼの存在を、日増しに彼は恐れ、その忠誠心を疑い、遂には粛正した。あれが失敗だった……」。

その後、暫し黙していたケニオン氏は「ところで……」と、我々に油モビッチ氏の臨終の様子を訊ねた。「知らない」と我々は答えた。実際、近親者も無く孤独な晩年のまま没した彼の死に際について、介護士に看取られて静かに息を引き取ったとか、過日の老朽したスタンフォード橋からの身投がそうであったとか、その程度の噂しか我々は得ていなかった。すると疲れたようにケニオン氏は、「後の事は彼らに──」と、我々にメモを託した。ペンを持つ老人の震える手を見ながら、我々はこの時初めてケニオン氏を許そうと思った。誰が悪い訳ではない、金の魔力が全て悪かったのだ。我々はケニオン氏から貰った干し柿を手に、打ちひしがれながら次の目的地へ向かった。

─────────────────────────────

ケニオン氏に従い、郊外のマーケットに向かった我々は、そこに当時マフィアの若頭だったテリー氏の姿を求めた。シルバー人材センターより派遣の彼は、積年の罪を償った今、孫ほどの年齢の店員に使われながら、そこで「万引き監視員」として働いているという。「貴重な当時の証言を伺いたい」という我々の申し出を、老人特有の人恋しげな瞳で了解したテリー氏。狭い古畳の休憩室、ポットの温茶を我々に並べると、老人はゆっくり語り始めた──

「あれは確か、2008年の事じゃった。『仁義なき戦い〜第五十四次欧州抗争』の真直中にあったワシらチェルスキーマフィアは、ドンの故国ロシアのモスクワで、念願の欧州制覇を目前にしておった。だが、そこに立ちはだかったのが最大の敵『赤悪魔署』じゃ。決着の付かぬまま時間が過ぎ、いよいよ勝負はロシアンルーレットへ。あと一人、その時じゃった。足を滑らせたワシは転倒し、手違いで自分の頭を撃ってしまったんじゃ。すまなんだー、すまなんだー。だが、ワシには判るんじゃ。あれは、『赤悪魔署』の策略じゃ。油断させて土壇場で勝負をひっくり返すのが、奴らの手口じゃ……」

老人の激しい語気より伝わる、後悔の念。仕方あるまい。彼らとてあの頃は、まさかあれが生涯唯一のチャンスになるとは思わなかっただろう。取りあえず我々は、土産にと持参した『赤悪魔サブレ』を、正座の後ろにこっそりと隠した。

だが当時、彼ら『チェルスキー一家』の足枷だったのは、何も『赤悪魔署』ばかりではなかった。07年には夫人が一家を裏切り、金庫から1兆円を持ち去った。08年には世界を震撼させた二人組の強盗団「リーマン兄弟」に襲撃され、約200億ドルを強奪された(所謂「リーマン・ショック」)。09年には、和菓子職人の角田某を誘拐した罪を問われ、一年間の新規社員獲得禁止を下された──と、あたかも『チェルスキー包囲網』の如く、全てが彼らに敵対していたのだ。

我々がメモを取る手から顔を上げると、唯一の娯楽なのだろう、老人は白黒テレビに映る時代劇に目を送っていた。
「天下の大舞台、欧州王者選手権でこの様な狼藉とは、許せん!」
「うぬっ、貴様は何奴?」
「チェルスキーども、余の顔を見忘れたか?」


余だと?──悪党たちの目に映るのは、欧州蹴球幕府六代目将軍ミシェル・プラティニ公、人呼んで『暴れん坊将軍プラティニ』の御姿。裁きへの不服に暴虐尽くしていた悪党たちも、突然の天下人を前に驚いて言った、

「UEFA様(=上様)!」
直ぐさま我々は、この『暴れん坊将軍』第何百部だかのモチーフが、09年のチャンピオンズリーグ準決勝である事に気付いた。気まずい我々の耳に、「成敗! ドログバ他一名は、3試合の遠島申し付ける!」という松平健の台詞と、「所詮チェルスキーは欧州幕府の厄介者。色々仕込んだ芝上の罠に、まんまと掛かったマフィア一味へ、心から感謝するプラティニであった」という締めのナレーションが聞こえた。だが、老人には全てが懐かしい思い出なのだろう、「ああ、これはワシの役じゃ……似てないのお」と画面に指を当て、その向こうの若い自分をなぞった。言葉も無く、我々はただその姿を見詰めた。

やがて、マーケット店長の声が聞こえた、「爺さん、お情けで雇ってるんだからさあ、せめて時給分は働いてくれよな」。大事な仕事の邪魔を詫び、心ばかりの商品券を封筒に手渡して、我々は座を後にした。去り際、マーケットの表を通る時、職務に戻ったテリー老人が、荷を積んだカートごと店を出て行こうとしている二人の老婆を制止している姿が目に入った。

「母さん、それと義母さん……だから、ちゃんとレジを通して……」

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「ウェイン・ルーニーさんは、いらっしゃいますか?──」

かつて幾度もマフィアを検挙し、その崩壊の道筋をつけた刑事たちに話を伺うべく、我々は赤悪魔署の門を叩いた。「私に用ですか?」と、仕立てのいい背広の男性が現れた。我々がその年格好に訝し気な表情を浮かべると、彼は言った、「ああ、父の事ですね」。

彼こそ父を継ぎ署のエース捜査官として鳴らし、現在はボスを務めるカイ・ウェイン・ルーニー係長であった。彼の呼び出しに、待人は倫敦バスより大きなリムジンで現れた。故サー・ボビーより譲り受けた毛皮帽子を被った老ルーニー、いや、サー・ウェイン・ルーニー氏である。

サーと共に、我々は別棟の警察記念館へ向かった。そこには、かの「ガナーさん」や「リバプールの偽神の子」など、今世紀初頭の世相を騒がせた犯罪者たちの歴史的な逮捕写真が飾られていた。硝子ケースには幾多のトロフィーに囲まれて、オベルタン刑事が獲得したバロンドール像と、ベルバトフ警部が獲得したオスカー像。台上にはベッカムの蝋人形、馬の剥製、そしてワンダー刑事の顕彰碑が──我々は彼の壮絶な殉職場面を思い出し、心を痛めた。

映像室に進んだ我々は、一本のフィルムに興味をそそられた。そのラベルには、『09年チェルスキー捜査記録』と記されていた。傍らのロブソン名誉館長は「今に続く50何連覇の……4連覇目のシーズンの映像ですな」と言うと、そのフィルムを映写機にセットした。

─────────────────────────────

2009年11月9日──
倫敦スタンフォード橋の下、マフィアの巣窟に到着した赤悪魔署刑事たちは、そこに潜伏するロシアンマフィア構成員たちに向け、拡声器で投降を促した──

「諸君! かつて君らの同志ガガーリンは言った、『地球は青かった』と。しかし今、地球温暖化で砂漠化が進み、この星は赤く染まろうとしている。一刻の猶予もならない。石油依存からの脱却こそが、今の世界の目標なのだ。相変わらずオイルマネー頼みの諸君らは、明らかに地球環境の害である。脱化石燃料! 脱油モビッチ! 脱チェルシー!」

当然、そのような正論を聞き入れる様な『チェルスキー一家』ではなかった。斜陽のイタリア国営マフィアから譲渡された新幹部、カルロ容疑者に率いられた彼らは、「無茶を言うな!」と赤悪魔署刑事たちに襲いかかった。即ち、試合開始である。

一際熱い闘志を見せるのは、怪我から甦ったスコッチ刑事。首を狩られぬ限り不死身である『ハイランダー〜赤悪魔の戦士』には、人一倍チェルスキーを憎む理由があった。彼の脳裏に浮かぶ、幼き日に見たテレビCM──


そう、「スコットランドの伝統のおいしさをあなたに」こそが明治チェルシーのキャッチコピーではなかったか。それが今や世間では、「チェルシー=ロシア」のイメージが定着。これは当然許せない。

だが、Aガルシア刑事を映画撮影で欠く赤悪魔署は、各自奮戦するも犯人逮捕に決定力を欠き、捜査は膠着状態のまま後半に入った。先に動いたのは『チェルスキー一家』。ジゴロの客人凸が、マフィア組織の抱える売春宿に失礼すると、その代わりに今日誕生日のジョー・コール構成員が現れた。彼は逆サイドの味方を指差すと、「私はコール、あちらもコール。血のつながりは無い」というダイハードギャグで自己紹介し、いよいよクリスマスも近いことを人々に告げた。

そして、75分。マフィアの凶弾が刑事たちを射抜く。連続した、有り得ない3つの判定──その理由を、関係者は今も口をつぐんだままだが、これがマフィア捜査の難しい所だ。捜査現場を取り巻くロシア人からは、「♪ほらチェルシー、もひとつチェルシー」と、追加点を求める歌。すかさずボスはサブに準備を命じた。「自分も『さぶ』なのか……」と頬赤らめる、おベルたん訓練生と共に、スーパーさぶのワンダー刑事が登場。いわゆる「さぶ」の同時投入である。

パッと見てタコ人間のおベルたん訓練生、だが西洋でタコは悪魔の化身、彼の登場に大いにマフィア根絶の機運は高まったが、しかしこの日、最後まで刑事たちが犯人を捕らえる事は無かった。映像の最後、まんまと赤悪魔署から組織を防衛し、勝ち点を強奪した若頭テリー氏の笑顔があった。何とも眩しいその笑顔──だが思えば、これがロシアン・マフィア『チェルスキー一家』の、輝ける最期の日であった。
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あの日赤悪魔署が提起した「プレミアリーグにおける石油依存からの脱却」の声は、その後ますます世界的世論となり、彼らの「油水の如く」と言われた資産もみるみる減少、元来赤字経営だったスタジアムの「命名権」を売りに出すまで彼らは困窮し、結果『明治製菓チェルシースタジアム』として、なんとなくすっきり収まった。その後の組織の崩壊については、今改めてここに記すこともあるまい。

かつて賢人は唄った──見ろよ青い空、白い雲。地球温暖化の危機が叫ばれたのは遠い昔、今我々が緑に囲まれ明るい太陽を享受できるのは、当時の赤悪魔署のお陰と言って過言では無い。半世紀余が過ぎた署の風景は様変わりし、今も現役として健在なのはギグス刑事だけだが、彼ら赤悪魔署がある限り、我々はこの平和の永劫を信じて疑わないのであった。

我々はその後も、油モビッチ氏の最期の言葉「アナタニモ チェルシー アゲタイ」の意味を求め、当時のマフィアたちを追った。だが、彼らの住処とは場違いなほど身なりの良い我々の訪問に、彼らは怯え、いくら「警察じゃない、もう逃げなくていいんだ」と諭しても、彼らは決して戸口を開こうとしなかった。

我々は大物マフィアのミヒャエル・バラック氏──愛称「ミヒャ」の現在も探したが、ある日彼の足取りは「ふっ」と消えた。すると「小林」と名乗る弁護士が現れ、「カイザー・ミヒャなど存在しない」と我々に警告した。

我々は、象の墓場──象牙海岸へも赴いた。ドログバ氏は最期まで、自分を置いて姿を隠した恋人ジョゼが「そろそろ私の所においで」と言ってくれる日を待っていたという。まるで、隠れんぼみたいなやり取り、繰り返し「もういいかい?」「まぁだだよ」と。そしてついぞ、その時は訪れなかった。だが霊媒師は、臨終のドログバ氏の耳に、幻だろうか、こう聞こえていたと言う──

「もういいかい?」「もうりーにょ」

結局我々には、油モビッチ氏の最期の言葉「アナタニモ チェルシー アゲタイ」に関し、決め手となる情報を得る事が出来なかった。止むなく、我々は報告所にこう記した、「貧しい人々に気前良く飴玉を恵むことで、彼は己の自尊心を満たしていたのだろう。油モビッチ氏は最期まで、嫌味な成金であった」と。半端の誹りは甘んじて受けよう。だが、そもそも終わった人の言葉に、いちいち理由を探って何の意味があるのか。過去は、今あのチェルスキー城の煙突から上がる煙霧のように消えていくのだ。我々の調査は終わった。

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エピローグ。

チェルスキー城の煙突に見えた煙──取り壊しが決まった城で、不要となった品を焼却炉で燃していたのである。「作業、ご苦労様」と声を掛けるのは、油モビッチ氏の最期を一人看取った介護士の老婦人であった。役目を終えて城を去る彼女は、炉の中に溶けてゆく、賞味期限の切れた『チェルシー』を見た。

生前油モビッチ氏は、「毎日よく尽くしてくれるお礼に」と、昔に所有していた製菓会社のバターキャンディーを彼女に与え,共に頬張っては、その際よくこう言っていた、「チェルシーはママの味」と。この病人は、この小さなバターキャンディに、三歳の時に亡くした母の姿を求めていたのだろう。チェルシー買収の真相は、そこにあったのだ。無論、彼女には言えなかった、「それは良くある勘違い。それはミルキー、ミルキーはママの味……」とは。

彼が死期近い病人という事もあったが、彼女自身4歳で実母と死別、父親にも捨てられた過去を持ち、彼のその思いは痛いほど理解できた。不幸な生い立ちから懸命に成功を目指した二人、一時男は世界一の金持ちオーナーとなり、彼女も若き日に一時の成功を得た。しかし、スポットライトが照らすその掌には「虚さ」しかなかった。そこに親の愛に替わるものなど、何一つ無かった。

死の床の妄想の中、最後に残した「アナタニモ チェルシー アゲタイ」とは、あの頃に言えなかった言葉、つまり「さっさとチェルシーを手放したい」という彼の本音だったのだろう。人が羨む様な成功も、時に当人には誰かに譲り渡したい「重荷」なのだ。立ち上る煙の消え行く様を眺めながら、彼女は己の過去を思い出していた。遠い昔、彼女もその「重荷」を持て余し、苦しみ、結果総てを失った。だがそれと引き換えに、「介護の仕事」に進むきっかけを得て、人の役に立つ生き方を見つけ、今、介護士として彼の臨終の言葉を聞いた。それが良かったのか、悪かったのか、年老いた彼女には判らない。あとどれくらい切なくなれば、あなたの声が聴こえるかしら──青いロシアンマフィア帝国の最期を見届けて、碧いうさぎはそこを去った。


to be continued...


次回、第13話『警察対組織暴力!』。
ワンダー刑事の活躍に、どうぞご期待下さい。
(タイトルは予告無く変更される場合があります)

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このドラマはフィクションです。実際の人物・団体・
実在する明治製菓、チェルシーFCとは、
一切関係ありません。
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by tototitta | 2009-11-09 21:42 | Manchester United | Comments(4) | ▲ TOP
チェルシー戦の前に
(記/minaco.)


【CLこぼれ話】

10分程度ですが、ルートは久しぶりのCLに出してもらいました。
ペジェグリーニ監督の背後に、ルートの「早く出せ」と言いたげな視線をチラっと見た気がする。とはいえ、ボールに触れる事も殆ど無いまま、ミランのペースで恙無くドローに。今のマドリーにワタシは何も言えんです。

さて、そんな試合終了直後のミックスゾーン。相当悔しがっていたはずのルートは、オランダNOS TVのインタビュウを受けるセードルフさんの所に乱入した。そして、一緒に大笑い。

コチラ の映像(蘭語)。

同い年として、オランダ代表時代にははみ出し者同士(?)として、セードルフさんは数少ない仲良しなのです。会話は聞き取り不能だけど、気の置けぬ間柄が伺えるような良い笑顔。きっと2人でユニ交換したのでしょう。



【スタンフォードブリッジに行く前に】

以前、ルーたんが語った所によると、「オールドトラッフォードで最も記憶に残ってる試合は、05-06シーズン11月のチェルシー戦」なんだそう。

ワタシも、あの試合の事はよ〜く覚えている。多分、モスクワのCL決勝よりも熱くなった。確か首位チェルシーに9ポイント差を離されるも、オールドトラッフォードで火事場の悪魔力を見せつけたユナイテッド。

ちょうどルートが臨時キャプテンを務める難しい時期で、この大一番の前には総決起集会を開いたとか。そしてモウリーニョの手堅くケ×の穴の小さいフットボールに対し、うちは生産性より意外性なんだぜとプライドを示し、フレッチに奇跡のゴールが生まれた。

直前キーノがボロクソに叱責した(MUTV事件)中堅選手達は、愛の置き土産を受け取りそれに応えた。そして今フレッチはスコッチとして逞しく成長し、ユナイテッドの屋台骨を支えている。任せたよスコッチ。

─────────────────────────────

ところで。
007やマカロニウェスタンのベタなテーマソングとか、スコット・ウォーカーのドラマティックで大仰なサウンドを現代に甦らせた、The Last Shadow Puppetsのアルバムがワタシのお気に入り。

その中から「いかにも」なこの曲を、明日の対戦に向けてどうぞ。'60年代後半の英国音楽は、とてもグラマラスな色気や浪漫を携えていたと思う。


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by tototitta | 2009-11-07 19:31 | 小ネタ | Comments(2) | ▲ TOP
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