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イラストレーターMinacoとなるほ堂が、サッカーのこととか、映画のこととか、日々日常に関して、その情熱の総てを地球にぶちこんで叩き付け、戦い挑み、愛を説く日々の記録。
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第九話『ダーティ・ギャリー』
(記/なるほ堂、絵と監修/minaco.)

【#09 Man Utd 2 - 1 Bolton】
放送日程変更のお知らせ:予告した第九話『ワンダー VS ワンダラーズ!』は、デカ長復帰のため日程を改めて放送致します。お詫びして訂正致します。
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俺はギャリー……ギャリー・ネヴィル。
赤悪魔署のデカ長だ。
職務遂行の為には暴力的な手段も辞さない俺を、悪党たちはこう呼ぶ、
『ダーティ・ギャリー』
と(以下、声/山田康雄)。
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俺に戦いを仕掛けてくる奴は大歓迎だ。
悪党どもは容赦なく引き倒す、サイドラインを割ったボールは全てマイボール、ちょっとでも俺に触れた奴は全員、公務執行妨害で逮捕だ。

"Go ahead. Make my day(やれよ、楽しませてくれよ。どうなんだクソ野郎?)"

まあ、近頃は管理職──いわゆる「座り仕事」を任されてはいるが、この右脚のマグナムと犯人逮捕への執念は錆ついちゃいないぜ。

朝、俺の部屋の電話が鳴る。
フィル、替わりに取ってくれ……いや、弟はもう居ないのか。

電話の向こう、ボスは苛ついている。
近頃の多すぎる失点、里帰り中の刑事たちの怪我──そして、先の遊園地『サンダーランド』摘発失敗時の記者会見に対する、司法検察局からの厳しい通達。

泣けるぜぇ……有罪を無罪としちまう様な、司法のジャッジメントには。
なまくらな連中のせいで、俺たちはどれほどホシを取り逃がしたってんだ。
まあ、俺くらいのヴェテランになると、それがボスの「私は命懸けで悪と戦う刑事たちの気持ちを代弁しているのだ!」という「計算づくのポーズ」だってことも、判ってはいるがね。

現場に出動して、守備の建て直しをしてくれ──ボスの言葉。
OK、ボス。

近頃、俺も歳をとって……銃弾飛び交う現場に向かう時は、いつもこう思う。今日が俺の最後の出動かもしれないってな。まあいいさ、17歳で刑事になって以来、棺桶で帰宅する決意は出来ている。出掛けに俺は、壁に貼った古い恋人の写真に告げる──ベックス、行ってくるぜ。

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事件現場に行く前に、立ち寄る所がある。

赤悪魔総合病院──
太腿を痛めた事になっているウェイン刑事と、出産間近のその妻コリーンの見舞いだ。殺風景な病室を飾る見舞いの品、赤い悪魔色の風船を携えて。デカ長の仕事は細かい。

病室を覗き込んで、俺は驚く──なんだ、もう生まれたのか。デカイ赤ん坊だな。
まだ頭髪がパサパサだが、そのうち生え揃うだろう。そんな俺に看護婦が言う。
「あれはお父さんですよ」
なんだ、ウェインか。

度重なるボスのヘアドラーヤーの放熱は、刑事たち──殊にウェイン刑事の前頭部と胸毛刑事の頭頂部に、深刻なダメィジを与えている。生まれ来る子供が物心つくまで……どうか子供が「髪の毛のある父親の姿」を記憶に留められますように。祈りを捧げる俺に、コリーンが気付く──

「あら? よく来て下さりんこ♪」

妻コリーンはその名の通り「こりん星」出身なので、翻訳に際しても忠実に記す。

「ご主人様ったら、ご機嫌が悪いんですぅ。ぷ~、怒りんこ♪」

成る程ウェイン刑事、エバートン時代を彷彿とさせるほど、その表情は青い。
これがマタニティブルーか? いや、どうやら奴は病院が苦手の様だ。

「……そ、その心電図が止まるんだろう? 
 で、子供が出てきて、俺が殺したって言うんだ……。
 カ、カメラは何処だ……リオは何処に隠れているんだ?」

トラウマに襲われたウェイン、俺が渡した見舞いの風船を掴もうともせず、それは空へと消えた。
身重の妻の制止も取り合わない──

「お前もリオとグルなんだろう? また俺を騙すつもりだろう?」

付き合いきれないので、俺は帰る。
病院の外、俺の背中に病室の窓からコリーンの声が届く。

「がんばりんこ♪ バイにゃーん!」

もう二度と、見舞いにくるのは止そう。

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事件現場に到着した俺。

オールド・トラッフォード管内に不法侵入した今日の容疑者たち……見慣れぬ顔ばかりだが、それも当然か。ワンダラーズ──辞書の記述によると、それは「放浪者、旅人たち」を指す。

説明しよう。大マンチェスター内ボルトン区に建つ『ボルトン・ワンダラーズ』とは、移籍市場を彷徨う放浪者たちの仮の宿。過去の宿帳には、各国よりのバックパッカーに混じり、山梨県出身のOL・中田ヒデ姐さん(現・中田氏)の名も。

05年、「自分探し症候群」を罹患して英国に赴いた彼女は、やはりこの「旅人の宿」に身を寄せた。また遡って02年には、西沢明訓高校ナインもここを宿舎としている。

魅力はやはり格安な宿泊料金だろうか。一泊もちろん、1$(ワンダラー)。
だが、そんな安宿に関らず、開所以来プレミア旅館組合員に名を留め、04-05期には見事に英国旅館ランク6位を記録。「UEFA特選の宿」の一つとして、欧州に名を轟かせた。

近年、その功労者を挙げるとしたら、先ずはスペイン人宿泊者イバン・カンポだろう。
色んな意味で存在感抜群であった氏の滞在時、人はそこを『カンポの宿』と呼んだ。
またもう一人──セキスイ・ハイムさんの縁戚に当たるイスラエル人設計士、ベン・ハイムさん。
約束の地を目指して流浪中の彼が築いた「防護壁」は、多くの侵入者を無情に跳ね返し、人はそれを『嘆きの壁』と呼んだ。

しかしこの両者──過去のガサ入れの際にウェイン刑事と故・泣き虫刑事を爆笑させた奇顔風体を持つ2人はもう居ない。郵政民営化と時同じくして『カンポの宿』が消滅し、ハイムさんは不相応な「チェルシーホテル新館」の設計に引き抜かれ、その後の行方は杳として知れない……。

──といった具合に、まあ正直な所、過去に俺が葬ってきた連中、つまり「赤い悪魔に敬意を示さないサイコ野郎ども」と違い、俺が出る幕でもないチンピラの類だが、この街に住所不定の輩が流入するのを放っては置けない。未だケツの青い署の連中にも、オレ流の……「ダーティ・ギャリー流の逮捕術」って奴を叩き込んでやらなくちゃな。

さあ、強制捜査の始まりだ。

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開始4分。──容疑者一名、自殺。
なんとも悼ましい出来事だが、ワンダー刑事の巧妙な捜査に観念した模様。
大したワンダーだぜ。

13分。──今度は俺の番だ。
だが、俺がマグナムに指をかけた時、ヴェテラン刑事ならではの俺の鼻が、人影の中にモカコーヒーとバナナの香りを嗅ぎ付ける。

「任せたぜ、エクアドル刑事」

俺のアダルトな気転が、エクアドル初のお手柄と、今日2人目の容疑者確保を生む。

あとは時間を待って、連中が投降するのを待つとするか。
なんといっても今日の捜査チーム、俺たちの背後には奴が帰ってきた。安心感が違うぜ──子供たちからも「ノッポさん」として愛されるエドウィン・ファン・デル・サール刑事、通称エド。

その欠場中、奴の住む「江戸城」の前に設置された目安箱には、その早期復帰を求める訴状が殺到していたと聞くが、これでゴール前の治安悪化に悩んでいた住人たちも安心だろう。
半端な悪党など、奴の手に掛かれば一網打尽──これぞ、大エド捜査網。

フォスター刑事、ゆっくり休め。

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だが、ボスの戦前の危惧通り、ボルトンのワンダラーズ(放浪者)たちは、厄介な連中だった。

75分。──黒満男刑事の頭上を越えた凶弾が、赤悪魔署に突き刺さる。
奴らの弾倉に、まだタマは残っていた様だな。やるじゃねえか、このクソ野郎ども。

尚も続く、奴らの抵抗。
激しい戦いに、つい先日に娘「プリンセス・ガルシア」が生誕したばかりのアンディ・ガルシア刑事が額から流血。その姿に気色を失う映画ファンたち──顔はやめて! 映画スターなのよ。

無論あれはハリウッドの特殊効果。状況が悪いと見て、「流血ギミック」で時間稼ぎを図った銀幕スターだったが、しかしそれは結果として、単なる数的不利を招くだけだった。

だが、俺は慌てない。

教えてやろうじゃねえか──俺が何故「ダーティ・ギャリー」と呼ばれているのかを。
俺は、襲いかかる悪党どもを引っ張ったり、抱え込んだり──まあ、色々な事をし乍ら、守備班の仲間たちに声を掛け、励ます。

黒満男刑事──
お疲れさん。後はミラクル・オシェイ刑事に任せろ。本業の鹿島も頑張れよ。

リオ姐──
最近元気が無い様だが、お前に暗い顔は似合わないぜ。
元バレエダンサーだったリオ姐。舞台引退後は赤悪魔署の婦警となり、その前職を生かしてブロードウェイミュージカル『コーラスライン』のプレミア版──『ディフェンスライン』の主演&演出家として鳴らしたお前じゃないか。さあ、最高のステップを魅せてくれ。

エヴァンス刑事──
いや、赤悪魔署の新世紀を担う『新世紀"エヴァンス"ゲリオン初号機』(通称「エヴァ」)。
ちなみに弐号機コリー・ エヴァンスゲリオンもキャリントンで待機中だ。

今日は、俺も若い頃に薫陶を受けたブルース元刑事部長の息子(隠し子)である「鼻曲り刑事」の代理として、ファーギーの『DF補完計画』に拠り戦線に投入されたお前だが、主犯格デイヴィス容疑者の石頭に苦戦の様子だな。耳に届く、自分に言い聞かせる様な奴の声──

「逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ」

そんな奴に、俺が掛ける声は一つだ。

「少年よ神話になれ」

─────────────────────────────

捜査終了。
捜査チーム代表として、今日の担当司法官と握手──そこそこ、肉屋の犬くらい元気だったぜ。

胸毛刑事の七色の時間稼ぎと、何故か指を鳴らしながら重役出勤のポール師匠(奴とは付き合いが長いが、未だに何を考えているのか判らない)が、難しいゲームを締めた。久しぶりの三人揃い踏みでの勝利に、ボスも饒舌だ。

「わりと苦戦してしまったが、
 しかし、今日はベテラン選手たちが
 がんばってくれたよ。
 育児や出産休暇で刑事たちが欠けるときもあるが、
 てっとうてつび、
 たいせつなのは、勝つ事。今日は良くやった」


縦読みに、ボスの本音が現れている。

今日も生き延びて、帰宅した俺。大きく「MUFC」と刈った生け垣が俺を迎える。
テレビでシティ対ウィガン戦を見る。そこには例の審判──注目浴びる中であのジャッジでは、マスコミに煽動された世論も、ボスの言い分を幾らかは理解するに違いない。かりそめの謝罪を表したボスも、今頃ほくそ笑んでいるだろう。

ところで、あの赤い風船は何処へ行ったんだろう?
ウェイン刑事が空に飛ばしてしまった、赤い悪魔色の風船。巡り巡って、一体何処へ?
まあいい。次週の捜査対象となっている悪党たち──奴らの今日の様子を捉えた映像でも
見るとするか。


to be continued...



次回第十話『ワンダーがやってくる ヤア!ヤア!ヤア!』、
次こそワンダー刑事の活躍に、どうぞご期待下さい。
(タイトルは予告無く変更される場合があります)

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このドラマはフィクションです。実際の人物・団体・
実在するボルトン・ワンダラーズFCとかとは、一切関係ありません。
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by tototitta | 2009-10-19 15:12 | Manchester United | ▲ TOP
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