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イラストレーターMinacoとなるほ堂が、サッカーのこととか、映画のこととか、日々日常に関して、その情熱の総てを地球にぶちこんで叩き付け、戦い挑み、愛を説く日々の記録。
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第十四話『ポンペイ最後の日』
(記/なるほ堂、絵と監修/minaco.)

【#14 Portsmouth 1 - 4 Man Utd】

イングランド南部の港町、ポーツマス……愛称『ポンペイ』。
マヤの預言、2012年を待たずして、その地は最後の時を迎えようとしていた。

発端は08年9月。ウォール街を震源とする世界的地殻変動は、遠く離れたポンペイにも伝わり、彼らの繁栄の象徴であったバブル岳が大噴火。火口より注ぐ噴石、降り積もる火山灰に、今や「プレミア最下位」に沈むポンペイ──。

しかし驚いた事に、街には未だ住人が残っていた。その情報は、逃亡犯チェルスキーを追跡中の我ら赤悪魔署にも伝えられ、さっそく私、ギャリー・ネヴィルを隊長とした救助隊が組織されたのである。

「一寸先も見えない……」

街を覆い隠す、白い噴煙の霧。思わず刑事たちが漏らした言葉は、正しくポンペイの現状を表わしていた。その厚い層を抜け、ようやく住人たちの避難するスタジアム入口に辿り着いた我々。だが、大量の救援物資を手に、一足早いサンタクロースのつもりの我々救助隊に対し、彼らの反応は予想外だった。

「霧の向こうから魔物が現れた! 中に入れるな!」

確かに我々は「悪魔」だが、しかし君らの救助の為に来た旨を説明すると、やがて建物内より彼ら被災者の声が届いた、
「……週末の度、この噴煙の霧(ミスト)の中から現れる怪物たちの手にかかって、多数の犠牲者が出ているのです……」。

なるほど、前監督ハート氏も犠牲になったらしく、建物内にその姿は見えない。どうやら一刻の猶予もならないようだ。我々は彼らに伝えた、
「さあ、外に出てくるんだ。脱出しよう。このままでは隣町のサウサンプトンFCの様に、三部にまで沈むのは時間の問題だ」。

だが、彼らはそれを拒否した。破滅の恐怖に憑かれた住人たちにより、新たな指導者に持ち上げられたユダヤ人アブラムが、「赤い悪魔の声に耳を貸す者は、地獄に堕ちる」と神託を唱えると、客席に集った、彼に煽動された狂信者たちが続き、

「そうだ! 一昨年のFA杯王者を神が見放す訳が無い!」
「そのうち中東の大金持ちが助けてくれるさ!」

……なんという事だろう。早々に鼠もレドナップも逃げ出したというのに、彼らはまだ過去の栄光にうつつを抜かしている。見るがいい、家屋も守備も炎上したポンペイの街。クラブの台所は火の車。黒い溶岩に覆われた街道は、何処まで行けども黒星街道──最早この街に留まる事は、自殺行為でしかないのに。

「多少の犠牲はやむを得ない」

ウェイン刑事が言った。新米パパは、早く帰りたいのだろう。他の刑事たちも、それに頷いた。見れば、実際に抵抗する者はそう多くなく、彼ら呼ぶ所の「アブラム様」とやらに命を受けた11名くらいか。彼らを倒せば、今は連中に盲従する住人たちも、進むべき道に気づくだろう。何度目かの大きな噴火を合図に、闘いは始まった──。

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以下、発見された『ポンペイ人の手記』より──。

11月28日(土)15時00分
噴煙の霧の中から現れた『赤い悪魔』の侵入を防ぐ為に、我々はゴール前に人垣を築く事にした。これまでもそうであったように、90分守り切れば連中は去るだろう。この由緒ある町ポンペイが、滅びるはずは無いのだ。

5分
しきりに、我々に外へ出てくるよう呼びかける悪魔たち。その手には乗るか。これまでその誘いに乗る度に、我々は痛い目にあってきた。先週も、先々週も、他所よりの侵略者や火事場泥棒たちに、もう少しの所で我々は「勝ち点」を奪われてきたのだ。

10分
何という事だ! ポンペイ大噴火がもたらした地震により、更にカマボコ状に隆起した我らがピッチ。そのせいだろうか、魔物たちが戸惑い、ミスを連発しているではないか。もしかして、奴らを倒す事が出来るかもしれない。反撃するんだ!

25分
「PK」と、誰かの声が聞こえた。PKとは『PSYCHOKINESIS(サイコキネシス)』、いわゆる『超能力』を指す。あろうことか悪魔はそれを操り、我々の築いた防衛線を容易に破った。やはり、ポンペイはこのまま滅びる運命なのか……。

32分
嬉しい出来事だ! 神は我々にも「PK」を授けた。ありがとう、伸びるユニフォーム。
無論「あの程度で?」と他人は思うかもしれない。だが、このポンペイ、正式名称ポーツマスでジャッジの天秤を誤るのは危険だ。明治三十八年には『日比谷焼打ち事件』が起きている。それ故の、天の「配慮」だろう。見よ、客席に我らの「ポーツマスの旗」が振られている! 

45分
闘いは一時休戦となった。冷静に考えると、本項で引用しているポーツマスはアメリカの都市で、ポンペイはイタリアの様な気もするが、この状況では、誰も冷静になどなれないだろう。我らの運命を司る天も同様だ。何が反則で、何が正しいのか、もう誰にも判らない。このカオスの元凶は、悪魔のリーダー、ギャリーだ。あれが「ネヴィル神拳」か。俺には全てが反則に見えるのに……。

48分
再開した闘い、またもや赤い悪魔により、均衡は破られた。悪魔皇子ウェインの、今日二発目。力の差を見せつけた彼らは、「マンチェスターには君らの為の仮設住宅もある。町を捨て、速やかに勝ち点3を明け渡し、今後は赤い悪魔のサポーターとして生きるのだ」と降伏を促す。だが、このまま降伏する訳にはいかない。我々はこの街で生き残る為に、前監督を自らの手にかけたのだから。

54分
刻々と崩壊するポンペイの街。もはや人は、我ら鎮守の道祖神「ボア天狗様」に、奇跡を託す他無かった。だが、「あれは何?」という子供の声に促された先、俺はピッチサイドでアップする「新種の悪魔」の姿を見た。タコの一種の様に見えて、しかし二本脚。その走る醜さは、同時に壮大な美であり、わずかに残った俺の理性は、それを理解する事を拒否した。まだ、あんな「怪物」が居るのか──。

「もう駄目だ」と、俺は呟いた。俺は正気ではない。早まるな。そうも思ったが、「このまま霧の中の怪物に喰われるくらいなら」と。

自殺行為──すると誰かがまた、「PK」と言った。

─────────────────────────────

……以上で、『手記』は終わっていた。これよりは再び自分、ネヴィル刑事部長に拠る、「休暇中」のボスに宛てた報告書である。

その後、程なくして闘いは終わった。小雨、帽子で何か隠したいウェイン刑事の「ハットトリック」と、胸毛刑事の追加点、宿直当番クスチャク警備員の好守、ポール師匠の自制によって我々は勝利した。ポンペイの街はやはり最下位に沈んだままだ。

力づくの説得虚しく、我々は住人を救う事は出来なかった。彼らは街と共に沈む事を望んだ。街の楽隊は、住人の心を鎮めようと最後までその演奏を止める事無く、沈み行くポンペイの街に殉じた。そう、タイタニックの楽隊のように。

現場では、彼らを悼みながら、地中深く沈んだ街の発掘作業が行われていた。我々は石膏を流し込み、多くの犠牲者と、またそこに古舟があった事を発見した。戦闘開始から60分、我々を「悪魔」と誤解した住人たちが、その攻撃から逃れる為に引っ張り出したものらしい。だが、かつてナイジェリアから多数のサッカー選手を乗せて欧州に渡ってきた舟は、もはや老朽化著しく、ポンペイの住人を救う事は出来なかった。その舟を、人は「カヌー」と呼んだ。

その頃、ポンペイの最後の生存者が送ったらしい『最後の電信』が、世界に届いていた。恐らく「もうだめ、ポンペイ」と打とうにも、緊迫した状況に上手くキーを押せなかったのだろう。その文面にはこうであった。

「もうだめぽ」
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to be continued...



次回、第十五話『お歳暮にはウェストハム』、
次こそワンダー刑事の活躍に、どうぞご期待下さい。
(タイトルは予告無く変更される場合があります)

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このドラマはフィクションです。実際の人物・団体・
実在するポーツマスFCとは、一切関係ありません。
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by tototitta | 2009-11-29 21:48 | Manchester United | ▲ TOP
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