(記/minaco.)
ユナイテッドを去った時ルートは、裏口から追い出されたようなものだった。
ファーギーに「出てけ」と宣告されたシーズン最終戦、ギャリー新主将に「グッドラック」とだけ言い残して荷物をまとめ、そのままオールドトラッフォードを離れた。キーンさんの引退試合に立ち会う事すら許されずに。そんな過去をきっとマドリディスタは知らないだろう。
それとは違い、マドリーを去る時は華々しく見送ってもらえた。
ハンブルガーSVへの移籍が完了した日の夜、ベルナベウでは試合前にちょっとしたお別れのセレモニーが用意された。月曜にハンブルクへ発つルートは、どうしてもマドリディスタへ感謝の意を伝えたかったらしい。そうゆう男だ。
大仰な音楽と共に、ピッチで迎えられるルート。選手とファンが温かく敬意を表してくれる。「後は俺に任せろ」とでも言うようにロンが両指をサムアップ。ロンはこの試合のゴールと勝利をルートに捧げる、と約束していた。多分、退場もルートに捧げてくれたんだろう。以前この2人に何があったかも、きっとマドリディスタは知らないだろう。
生え抜き以外、マドリーの外国人選手はクラブに対し何の義理もないはず、と言われる事がある。確かにそれも解る気がする。ルートの場合も前フロントならともかく、現フロントには取立て恩義もないかもしれない。
けれど、ファンは別だ。これまで良くしてくれたマドリディスタに対し、ルートはそこまで不義理ではない。彼は「マドリーでは本当にファンタスティックな時間を過ごした」と言い、ファンに別れの手紙を書いた。しかも家族と連名で。ほんと筆マメ。
出て行く際に不満をぶっちゃける外国人選手も少なくないマドリーで、そうした人が居ただろうか。政権交代によって居場所を失くした事は同じなのに。ルートは表玄関から去る。ユナイテッドでは叶わなかったが、今回は堂々とサヨナラを伝える事が出来た。恐らく彼には良い思い出しかない。功績などと大それた事よりも、ただゴールを荒稼ぎしたガチだと、きっとマドリディスタは知っているだろう。
まるで引退するかのように感動的なセレモニーだった。ある意味ではそうかもしれない。旅はオランダからイングランド、スペイン、ドイツへと欧州を一周りして、やがては出発点に帰るのかもしれない。プロレスで言えば、シングルのチャンピオンベルトを賭けたメインイベントではなく、タッグマッチのセミイベントへ移行するみたいなものかもしれない。
しかし、それでもプロレスラーがプロレスラーであり続けるように、ストライカーもストライカーであり続ける。
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最後に、今この駄文をご覧になるマドリディスタさんがいるのならば、ワタシからもご挨拶を。
大変お世話になりました。良い思い出になれば幸いです。
ありがとうございました。