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イラストレーターMinacoとなるほ堂が、サッカーのこととか、映画のこととか、日々日常に関して、その情熱の総てを地球にぶちこんで叩き付け、戦い挑み、愛を説く日々の記録。
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第三十七話『X-ファイル:ハーグリーヴスを求めて』
(記/なるほ堂、絵と監修/minaco.)

【#37 Sunderland 0 - 1 Man Utd】


01

── モルダー、あなた疲れてるのよ

いや、スカリー。疲れているのは僕じゃない、ユナイテッドだ。

僕はFBIで超常現象事件を扱う「X─ファイル課」のF・モルダー捜査官(声:風間杜夫)。僕は信じたい……我々には伺い知れない真実が、どこかに必ず存在するということを。イエティ、チュパカブラ、オベルタン、この世界には「UMA」と呼ばれる、未だ謎の怪生物たちがいる。僕が今、この管轄外の英国に逗留している理由もそれだ。

「ハーグリーヴス」

その名前、スカリーも一度くらいは耳にした事があるだろう? いや待って、最後まで話を聞いてくれ。

80年代の初頭、かの雪男「ビッグフット」で有名なカナダのカルガリーで最初に目撃されたハーグリーヴスは、その後、旧ナチスドイツ領のバイエルン地方に「大きな足跡」を残し、07年以降はネッシーやミステリーサークルといった超常怪奇現象の本場である英国で、ごく数回だけ目撃されている未確認生物だ。

「あれは想像上の生きものだよ」
「下水道の中で作業員が目撃したらしい」
「二足歩行するらしいね」
「いや、もう二足歩行は出来ないらしいよ」


あまりの目撃例の少なさに、半ば「都市伝説」化していたハーグリーヴスの存在。しかし僕は先日、約1年半ぶりにそれが英国マンチェスターのオールド・トラッフォードで目撃されたという情報を入手し、早速単身でこの地に乗り込んだわけだ。

オールド・トラッフォード──後に映画『アンブレイカブル』やTVドラマ『LOST』の原典となった、かの航空機事故より奇跡的生還を果たした人々(一説では、彼らは人では無く「悪魔」とも)が築いたとされるその建築物は、現在も英国蹴球界の治安を守る警察組織『赤悪魔署』として現役の傍ら、数々のオカルト超常現象の舞台とされている。

ロッカールームで頻発するポルターガイスト現象、人間を襲うサッカースパイク、ヘアドライヤー。シーズンオフの度に銀河系から飛来するUFO及びエイリアンによる「アブダクト(誘拐)」事件。時間軸が歪んで変化する、ロス・アラモスならぬ「ロス・タイムの謎」。影の政府の陰謀か、謎の念力「PK」の発現。著名なゴール狩人のワンダー・オーウェン氏が突如姿を消した、いわゆる「人体消失」現象。今も伝わる不老不死の胸毛人間の伝説。かつて、喋る馬が駆けたという緑のターフ。

中でも特筆すべき事件、05年にこのオールド・トラッフォードの地で起きた超常現象の体験者である、ロイ・キャロル氏との接触に僕は成功した。

「あれ、ゴールでねじゃ。オレよあん時、ゴールラインが曲がるのば見たんだず」

そう言って、彼は一枚の写真を見せた。
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よくある精巧な偽造写真だろうか。いや、違う。僕は答えた。

「んだな。んだがおめ、キャロルじゃねべ。やまがだ弁のダニエル・カールだべ」

その時だった。全面禁煙のオールド・トラッフォードに漂う紫煙。現れたな、スモーキングマン。通路の先の暗闇に立つ男に、僕は訊ねた。

「教えてくれ、ハーグリーヴスは実在するのか?

スモーキングマンは暫し後、言った。

「ハーグリーヴスは、実在する。人類はやがて、その存在を目の当たりにするだろう

不気味な予言と共に、スモーキングマンは再び闇に消えた。僕は奴の去った場所から、奴が落としていったらしい「マッチ箱」を拾い上げた。ハーグリーヴス発見の手掛りを得た興奮に、僕の耳には、遠くから響く「ここは禁煙ですから、我慢して下さいよ。ベルバトフさん」という係員の声など入らなかった。

僕は車を走らせて、マッチ箱が示す場所に向かった。待ち受けるのは政府の妨害、宇宙人の陰謀だろうか。でも止めないでくれスカリー、僕がやめたら、奴らの勝ちだ。そうだろう、スカリー?

── モルダー、あなた疲れてるのよ



02

「確かにこのマッチは、うちの店でお配りしている物ですけど──」

高級バー『さくら』の美人ママ(眞野あずさ)は答えた。しかし、未確認生物ハーグリーヴスに心当たりは無いと言う。すると、気転を利かせた店員の詩織ちゃんが言った、「もしかして、ハグレ刑事の事じゃないかしら?」。ハグレ刑事──その名前と、いつもハグレてばかりいる様からそう称される、復帰“慎重派”の赤悪魔署名物巡査長だ。

だが、ハグレ刑事は今年2月に惜しまれ乍ら亡くなられたはずでは? しかし、ママはボトル棚に彼愛飲の養命酒を指して言った、「やあねえ。ハグレさんは、今も毎日の様にいらしていますよ」。やはり僕は疲れているのだろうか。

ますます深まる、未確認生物ハーグリーヴスの謎。僕はママに供された「当たり前田のクラッカー」を養命酒で流し込みながら、カウンター越しのテレビを眺めた。何かのドタバタ系映画の「NG集」らしい。主演はアンディ・ガルシア。何処か、先程の「スモーキングマン」を思わせる姿。気のせいだろうか、スカリー。

僕はスポーツ新聞の番組欄に、映画の題名を求めた。今話題の『アリス イン ザ ワンダーランド』? ──いや、違う。そこにはこう記されていた。

『ギグス イン ザ サンダーランド』

アンディ・ガルシアの「NG集」というのは、僕の勘違いだったようだ。まあそう誤解しても仕方無い内容だったが、それは赤悪魔署刑事たちによるサンダーランド強制捜査の現地生中継だったのだ。

その画面に、僕は釘付けとなった。そこには様々な超常現象が網羅されていた。キャンベル、リッチー、バーズ──未だ現世を彷徨う、元赤悪魔署殉職刑事たちの霊。前述の不老不死の胸毛人間。ヴィディッチ捜査官の向こうには、そのドッペルゲンガーである敵将ブルース。

そして先週、事件の渦中にあった三人の刑事の姿も。警察はそれを敵対組織による陰謀事件として扱ったが、僕の目は誤摩化されない。あれは僕の専門である超常怪奇事件だ。エヴラの嘔吐は毒物が原因ではなく、彼は口から「エクトプラズム」を放出したのだ。ルーニー一家の件は、僕の妹同様、UFOに「アブダクション(誘拐)」されていたに間違いない。勿論、彼にその記憶は残っていないだろう。そしてナニ捜査官の体調急変、あれは宇宙人に仕組まれた「インセミノイド(異性種間妊娠)」の顕著な症状だ。スカリー、君なら判るはずだよね。

── モルダー、あなた疲れてるのよ



03

その時だった。画面の向こう、ウォーミングアップ中の背中が映った。その生物は、ボールパーソン宜しく、足下のボールを拾い上げて誰かに手渡した。

「ハーグリーヴスだ!」

僕は叫んだ。二足歩行のハーグリーヴスの映像は、いつ以来となるだろうか。血圧が上がり、酸素欠乏症に陥りながら、僕はバーのテレビを手繰り寄せ、画面に叫んだ。

「ええい、サンダーランドはいい、ハーグリーヴスを映すんだ!」

もう駄目か、僕は赤悪魔署の勝利そっちのけで、刻々と失われてゆく時間を惜しんだ。しかし、僕の念が通じたのだろうか──ピッチサイドに再び、ハーグリーヴスの姿が。すっかりヨゴレが入り、劣化したルックスにかつての美少年の面影は薄いが、あの天パ頭は、正しく彼に間違いない。

この瞬間、彼の「未確認生物」という肩書きは消えた。ハーグリーヴスは、全ての人々の前に姿を現した。影の政府、宇宙人、両膝の故障──それらが再び彼の存在を闇に葬ろうと謀っても、これほどの証人の口を封じる事は出来ない。たったヘディング一つ、たった1分25秒の、しかし貴重な映像。

僕は考えた、ハーグリーヴスは何故この世に存在するのか。僕ら人間のように、只の地上の一生物としてだろうか。いや、彼は何かもっと偉大な存在、例えば4連覇の希望を捨てないマンチェスター・ユナイテッドの一部として存在し、僕たちに何かを語りかけていると信じたい。そう、数々の「奇跡」を起こしてきた、全てのオールド・トラッフォードに於ける超常現象と同じく。

「Maybe there's hope(まだ希望はある……)」

FBIのオフィスに戻った僕がその声に振り向くと、湿った暗い物陰に、あの赤悪魔署パトリス“エクトプラズム”エヴラ捜査官の姿があった。

「モルダー捜査官、君は知っているかね? 07年のJリーグ最終節、既に降格が決定していた横浜FCが、キングカズの突破から首位浦和レッズを敗り、我ら鹿島アントラーズに優勝が転がりこんだことを……」

僕の答えを待たず、彼の姿は消えた。幻だろうか。いや、彼の去ったそこには、小学生の様な丸文字で「勝つ、全部勝つ。世界制服(原文ママ)、エイズ撲滅」と書かれた色紙が残っていた。

エヴラは暗闇がもたらした錯覚だった。僕は確信した。あれは現代のクローン技術の粋を集めて造られたエヴラのオリジナル、鹿島アントラーズの主将、その人だったと。誰もが奇跡を信じている。スカリー、科学者の君だって、本心ではそうだろう? プレミアリーグ最終節への願いを込めて、僕は壁に貼ったポスターの文字を読んだ。

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「I WANT TO BELIEVE(僕は信じたい)




Epilogue

「お出かけかな、スティービー・Gマドリッド、それともチェルシーへ?」

イエーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!

リヴァプールの邸宅から車を走らせようとしたスティーブン・ジェラードの前に立ちはだかる、赤毛の男。彼こそ、赤悪魔署「CSI(センターハーフ・サイエンス・インベスティゲーション)」の主任、ポール・スコールズ警部補(声:石塚運昇)である。

「今時わざわざ何の用だ、ポール警部補!」

「最終節、チェルスキーとの決着の前に、一つ、解決しておかなくてはならない事件があってね。スティービー」

「俺には関係無いし、興味ないね。道を開けろ!」

「お急ぎの様子だな。まるでリヴァプールという名の沈没船から逃げ出す、ドブネズミのようだ」

「ただ、一杯引っ掛けにいくだけだよ!」

「ほう、また酒場で素人を暴行しに?」

「また古い話を……あれは不起訴になっただろう!」

「まあ喜べ、今日は君にプレゼントを持ってきた。とは言え、君はプレゼントを贈る方が専門のようだが──そう、逮捕状だ」

イエーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!

「待てよ、一体俺が何をしたと言うんだ?」

「私はお前を誤解していた様だ。教祖ベニテス率いるリーガプール教の、少し頭の弱い暴れん坊に過ぎないと。しかし、君は素晴らしいテクニシャンだ。そう、あれは見事なスルーパスだった」

「あれはお前もよくやる、ただのミスパスだよ!」

「その見返りに、チェルスキーから幾ら貰ったのかな? 油田の一つでも譲り受けたか、それともただ、ユナイテッドに優勝回数記録を抜かれるのが嫌だったとか──」

「そこまで言うなら、何か証拠でもあるのか?」

「我々CSIを見くびらない方が良い。あの日アンフィールドで事件を目撃した数万人が証言している。このテープを聴きたまえ」



「これは我々のアンセム、『You'll Never Walk Alone』じゃないか?」

「そう、『あなたは一人ではない』だ。あの日、チェルスキー容疑者もまた、一人ではなかった。誰かが味方をして、ゴールを手引きした──それはお前だ。この蛆虫め

イエーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!

「無茶苦茶だ!」

「名門も今やチェルスキーの手先とは、堕ちる所まで堕ちたな。そうそう、ローマに住むリーセから連絡が来た。奴は喜んでいたよ。リヴァプールを出た自分は『勝ち組』だと。そしてお前は、負 け 組 だ」

「お前、リーセと知り合いなのか?」

「大英百科事典……『赤毛連盟』と言えば、お判りかな?」

「シャーロキアンしか判んねえ様なネタを使うな! そもそもこのブログ、毎度読者を置いてきぼりにする様なネタを使って、今時Xファイルなんて、一体誰が喜ぶんだよ。ただの自己満足じゃねえか!」

「私が満足するのはリヴァプールのような使えないクラブが、エバートンよりも下の順位が確定して涙目を晒す時だ」

「聞いてねえよ、縁起でもない事を言うな!」

「では、最期に言っておこう……ファーギーは決してお前を許さない。お前が来期何処のユニフォームを着ようとも、必ず破滅させてやる。これは約束だ。そして我々ユナイテッドは決して……そう、決して優勝を あ き ら め な い」」

イエーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!
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to be continued...


次回、最終回『さらば、赤悪魔署! そして又、ボスと共に』。
どうぞご期待下さい。
(タイトルは予告無く変更される場合があります)

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このドラマはフィクションです。実際の人物・団体・
実在する『Xファイル』とは一切関係ありません。
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by tototitta | 2010-05-06 17:14 | Manchester United | ▲ TOP
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