(記&画/minaco.)
さて、ワールドカップ開幕まであと僅か。メキシコ映画を観てメヒコ代表を応援しよう〜てな訳じゃないけれど、タイミング良く
『ルドandクルシ』('08)を観て来たのだった。
ガエル・ガルシア・ベルナル&ディエゴ・ルナの若手スターが、2大看板で共演。昭和によく作られた緩いアイドル映画を思わせつつ、正統派?
「成り上がり」映画でもある。いやあ愉快だった。
キレると怖い兄の通称ルド(ルナ)、自惚れて調子こく弟の通称クルシ(ガエル)は、今日も土のグラウンドでボールを蹴る。兄ちゃんはGK、弟はFW。すると、ある日偶然スカウトの目に留まり、メヒコサッカー界で一旗上げるべく、いざ田舎のバナナ園からメキシコシティへ。
ところが、このメヒコ版ノエル&リアムみたいなDQN兄弟は全く成長しないんだ。最後までブレないのが素晴らしい。まあGKにはアクの強いキャラも多いし、FWは能天気な方が良いか。野心を叶え成功したのも束の間、弟は女に入れ込み、兄ちゃんはギャンブルに金を注ぎ込み、すっかりグダグダに。そして遂に、兄弟の運命を分ける大一番が…。
メヒコにはあんな怪しい代理人が居るのか、賄賂とか賭博とかあるのか、セクスィー美女に言い寄られるのか、そもそもあんな簡単にプロ選手になれるのか…などなど、出来すぎたお話にツッコミ入れるのは無粋である。それはまるで、
ルチャリヴレ(メヒコのプロレス)には台本があるのか?と尋ねるようなもの。あるかもしれないし、無いかもしれない。それこそがファンタジー。
何しろ実際のメヒコだって、あのクアウテモク・ブランコが未だW杯代表とゆうファンタジーを体現してるではないか。時にファンタジーが最も現実を表し、映画はさりげなくメヒコサッカーの本質を語っているような気がする。同じくメヒコ選手のサクセスストーリー
『GOAL!1〜2』(part3はどうなった?)よりも、ある意味よほどリアルかも。
ハリウッドなら試合シーンをカッコ良くCG合成にしちゃう所を、メヒコ映画はその些細なディティールだけでサッカーそのものを伝えてしまう。つまり、大事なものはゴールの外だったりする。マルチ商法にハマる嫁。ナレーションが語るサッカー薀蓄&格言。ガエルが踊り歌う安っぽいPV。カンポスのゲーム。カップヌードル。そんな俗っぽくて好い加減で何でも有りの混沌が、勝ち負けに止まらない懐の深さというもの。
そう、色々あったけど、母ちゃんの家も建てられたから良かったじゃん。そんな感じで、メヒコサッカーは明日もファンタジーと共に続くのだ。
「ルドandクルシ」の映画詳細、映画館情報はこちら >>