(記/minaco.)
02
“De Biezen kamp”フットボール場でのルートは、20年経ってオールドトラッフォードに居る。ストライカーは我々にスタジアム・ツアーをしてくれた。
ルート「もう次のグループが待ってるね…今行ってもいい?」
【オールドトラッフォード内の様々な部屋を案内するルート。ちょうど、ツアーに来た小学生の団体が扉の向こうで待っている。彼は子供達を1人ずつ迎え入れる。】
「やあみんな、ツアーはどうだい?楽しんでるか?」
「さあ入って入って」
【子供達はカメラを向けたり、何故こんな所に居るのかといぶかしげに覗き込む。ふと、列の中に青いユニを見つけたルート。】
ルート 「おい、何だそれ」
子供 「チェルシーだよ」
ルート 「ハハハ!」
【あっという間に人だかりとなり、引率の先生にまで写真を撮られながら、「今、インタビュウされてるところなんだ」と説明する。】
【続いて、ドレッシング・ルームへ。ルートはツアー客が出てゆくのを物陰からこっそり確認し、次に来るグループの為ドアにストッパーを挟んでやる。すれ違う人々が何事かと驚いた顔で振り返る。】
──これが君のドレッシング・ルーム?
「そう、ここだよ。今、写真に撮られた…ハハ。ここが俺の場所」
【突き当たりにある自分の席に腰掛けるルート。それぞれの場所に、顔写真が掛けられている。】
──ああ、君はギグスの隣だね。
「そう。そしてスミスは今怪我してるけど、ルーニーがここ」
【廊下では次々にサインをせがまれる。1人の男性に頼まれ、ユニフォームにサインする。】
「君に?」
「いいえ、チャリティーです」
「ほんとにチャリティーだな?君のじゃないぞ!」
◆ ◆
「ファーガソンのオフィスを通り過ぎて、ここの後ろのね。そしてキャプテンが先頭に居る。ビジターのドレッシング・ルームがあって、そのチームと一緒に歩くんだ」
【ツアーでは、ピッチへ続くトンネルを歩く体験が出来る。テープでスタジアムの歓声が流れてくる。】
──君が聞いてるのはこの音?
「俺達がピッチへ歩いてく時、こんな音がこう耳に入ってくるんだ。本当にこういう音だよ。ピッチに入るや否や、“この”物凄い数の人が目に入る…いつだって信じらんないよ。この歓声、この人だかり。
俺達が出てくると、有名なストレットフォード・エンド(ゴール裏)、これがその最も有名なスタンドさ。広告は何も眼に入らないけど、伝統的なバナーだけは見えるんだ」
【オールドトラッフォードでゴールしたルートが一目散にコーナーへ走り、ユニフォームを脱いで放り投げた場面が流れる。】
「レオンティンと俺の家族はいつもその辺に座ってる。角の所。こっちサイドで俺がゴールした時、大抵はその後あのコーナーに行く。そこにいる人たちの方にね。ここでプレイしたら、あらゆる方向から声援が聞こえるよ。
結局、俺がプレイするのはその為って訳だな」
「最も美しいゴールか…。フルアム戦、中盤でボールを受けて、確か…俺は右足アウトサイドでターンして、2人の選手の間を猛スピードで走って、そして6ヤードボックスまで行って。最後のDFがいて、俺は左足で自分ごと相手を背負って、ゴール前でフリーになって、アウトサイドでシュートした。ボールがゆっくりネットに入ったな。そしてこの辺りで俺も走り終えたんだ」
──最近は、君もあの辺に…(ベンチを指す)。
「うん。そりゃあ楽じゃないよ。あそこに座ってるのは…。サイドラインでウォーミングアップして…時々10〜20分のチャンスをもらう…時には無し。うん、そりゃキツイよ…」
【The Kinksの“Days”と共に、オールドトラッフォードのピッチにたたずむルート。そして、思い出の場面がカットバックする。】
♪Thank you for the days,
Those endless days, those sacred days you gave me.
I'm thinking of the days,
I won't forget a single day, believe me.
◆ ◆
【再び、通路にて。ちょうどそこには若い日本人グループがいた。彼らは「キャー」と悲鳴を上げ、ちゃっかり写真に収まる。そしてルートが去ると、すかさず「カッコイイ〜〜〜!」と叫んだ(!)。】
*この時遭遇した方々へ。オランダ全土に放送されましたよ!
〜続く〜