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イラストレーターMinacoとなるほ堂が、サッカーのこととか、映画のこととか、日々日常に関して、その情熱の総てを地球にぶちこんで叩き付け、戦い挑み、愛を説く日々の記録。
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by tototitta
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ガチ期の終わり
【やさしい悪魔】

いつかの試合、ギグっさんの空けた左サイド後方をせっせとカバーに走るRvPを観た。まあ、フリーダムなギグっさんの穴を後輩新入りが埋めるのは常だし、むしろ光栄なほどなのだが、ガナーズ事務所で8年の経験を積んだ後アイドル脱皮を目指し転入して来たRvPは、先輩のどんなムチャぶりにも張り切って応えていた。

何しろ、ギグス先輩はじめキャリック、ルーたんらからこんだけ美味しいパスやアシストを奢っていただいてる訳で。その度、新入りRvPは「勉強させていただきます!」とばかりに感激して見える。センパイと呼べる存在がピッチに居ることが嬉しいのだろうか。まるで、嫁ぎ先の姑や親戚一同から思いの外手厚くもてなされ、恐縮しきりな嫁のようなRvP。

そんなシーンが象徴するように、今シーズンのユナイテッドはやさしい悪魔だった。あろうことか、とっても情け深い悪魔だった。


RvPを獲得したのは、ちょうど2001年にルートを連れて来たのと似てるような気がした。というのも、キーンさん自伝『ロイ・キーン 魂のフットボールライフ』を読んだら、トレブル後リーグにさしたるライバル不在で、何となしにヌルい空気がチームに漂っていた当時の事が、近年と同じように感じたから。

それに危機感を持ち、もう一度「飢え」た気持ちを思い出させる為の触媒が必要だったのではないか。2001年は怪我でユナイテッド移籍と更にユーロ出場も逃してガツガツと飢えまくる暴れ馬だったが、今回は8年も居ながらタイトル無しで飢えてたRvP…絶好の素材である。

暴れ馬と同様にゴールを重ね期待に応えたRvPだが、但し、昔と違うのは赤悪魔がすっかり優しくなっていたこと。かつてはキーンさんの象徴する「怒り」、今はルーたんの象徴する「愛」がユナイテッドのカラー。時代は変わった。飴とムチ、の飴かもしれんが。来季は要求が厳しくなって鬼姑になるかもしれんが。

若い子の扱い方も、多分もう昔と同じでは通じない。ギグっさん(若干上から目線)は相変わらずだが、後半戦の赤毛さん不在も「やさしさ=ソフト路線」の影にあるのかもしれない。何より、昔ながらのヘアドライヤーやガチな管理術などでは今どきの子にそぐわない現実を、ファーギーは気付いているんだろう。


【さらば、ガチ】

そんな感慨を持ったシーズンが終わる頃に、ファーギーの引退発表。そりゃあ動揺した。このショックを赤悪魔ファン以外にも解りやすいよう例えるなら、 黒 船 来 航 のレベル。何せ、ワタシ含め赤悪魔ファンの多くは「監督は交代するもの」という常識に対し、まるっきり免疫がない。完全に他人事だった。ギグっさんだってそうだろう。

でも、解るような気もする。やさしい悪魔への変貌は、そう思わせる。ガチ時代の終焉、ガチ氷河期の訪れ…ひとつひとつ、確実にその時が来てると実感せざるを得ない。ファーギー決断の理由はあれこれあれど、それを取り巻く現状については、自分なりに思うのだった。

おととし、ポールさん引退(後に復帰)の際には「これでフットボール界は暗黒時代を迎える」と思った。兄も既にピッチに居ない。昨季、暴れ馬が現役引退し、他にも同世代のストライカーがブーツを脱ぎ、ガチストライカーの時代が終わった。赤毛さんもいよいよ本当に今季が最後となり、その最終戦の前日、ガチ・プロレスラー小橋建太もまた、リングを去った。

いつしかプレミアに歯応えあるライバルは見当たらず、あっさりと赤悪魔が優勝。キャリントンはネーミングライツを売却。見渡せば、ガチ不毛のしょっぱい荒野が広がっている。それでも、かつてガチ共がしのぎを削ったような荒ぶる闘争心を、キーンさんのような怒りを持ち続けることができるというのか。もう闘うべき相手はここに居ないのに。

あれだけ貪欲な人だもの、ファーギーの情熱やモチベーションが枯れた訳じゃなくて、ファーギーでなくちゃ手綱を引けない選手、赤悪魔で育てるに相応しい選手が枯れたんだという気がする。ルーたんを最後に、ストリートフットボールで育ち、野性の本能でプレイする選手は出てこない。勿論キーンさんやカントナのような選手も。

ならば、ここまで。

自分にとって、ファーギーは現場で若い衆(lads)を束ねる親方(gaffer)であり、労働組合のリーダーみたいなものだった。労働党支持者だし。英国映画で観るように、そこで最も忌み嫌われるのはスト破り=団結を乱す行為。だからボスは力ずくで若い衆を守り、掟破りの者に容赦しない。そうゆうものだと思ってた。

でも今はそんな時代じゃない。潮時を見てたのかもしれない。ひとりでやる・全部やる・最後までやる…ファーギーもそうだった。こうしてあのファナティックでロマンティックなガチ期は終わったんだ。


赤悪魔で続いたご長寿大河ドラマシリーズは、第26シーズンをもって完結である。この後始まるのは「新・ビバリーヒルズ青春白書」とか「新・スタートレック」とかになる。面白いかもしれないけど、酷くつまらないかもしれない。

ホームズものみたいに今後何度も聖典を蘇らせ上書きしていくだろうが、もう一度面白いものを作るならいっそ、現代版『SHERLOCK』が出来るくらいまで待たなきゃないかもしれない。


【モイーズ、伝統の赤毛】

で、慌しくも後任監督にディヴィッド・モイーズと決まった訳で。候補と噂された中で、最も痛みの少ない選択というか、ソフトランディングというか、保守的な選択とも言えるけど、実際ホッとした赤悪魔ファンも多いんじゃないかという…。赤毛も伝統だよね。ファーギーが推したともされるけど、簡単には決められないし、何より誰だろうが「ファーギー以上に成功するのは無理、ゼッタイ」って予め前提になってるというクラブなのだ。恐ろしい事に。

ひょっとしたら、更にファーギーの教え子たちが周りを固める可能性もある。フィルが何故エヴァートンを退団するのかも謎だ。そうやって、保守的なファン心理を懐柔するつもりかもしれない。むしろファーギー院政時代になったりして。それでもガチストとしては、今のところ将来のことなど想像もしたくない訳で。ただただ終わりを噛みしめながら、受け入れるしかない訳で。


とはいえ、ピッチ内で絶滅種でも、ガチはピッチ外でまだ生息してる。キーンさんは相変わらず空気を無視して怒り、そのキーンさんをクレランドさんが怒り、兄は相変わらず過剰でクドいコラムをしたため、最果ての北欧でオーレが虎視眈々とアップを始め(?)、オランダでは暴れ馬が1年の放牧からフットボール界に戻ってくる(「最初の仕事がファーギーが引退した後のユナイテッドだったりして」とか言ってたぞ…)。

自分は懐古主義でイヤな小姑みたいな赤悪魔ババアになると思う。既にそうだけど。でも、いつもロマンティックな側を見ていたい。例えそれが妄想でも。
ガチ期最後の恐竜とも言うべきファーギーや赤毛さんがピッチから姿を消しても、『ジュラシック・パーク3D』を脳内で観続けていたい。

そういや、赤がお好きだった故ダイアナ・ヴリーランドさんは、現実と虚構が入り混じった“ファクション”という言葉を創造していらっしゃる。ドキュメンタリー映画の中で彼女は言ってた。「真実でも退屈な話ならお断り」と。
by tototitta | 2013-05-12 01:14 | Manchester United | ▲ TOP
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