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イラストレーターMinacoとなるほ堂が、サッカーのこととか、映画のこととか、日々日常に関して、その情熱の総てを地球にぶちこんで叩き付け、戦い挑み、愛を説く日々の記録。
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by tototitta
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ルーニー、ニステル、そしてジャンボ鶴田。
ファーギーの頭には、 一つの理念があった。
(エースが衰える前に、次のエースへ禅譲する。)
ユナイテッドには他所の出来上がったエースを攫ってくるというサッカー界の常識は無い。
しかしユナイテットを常に強豪たらしめている理由はこの理念にある。エースはクラブが育てるのだ。

名将と呼ばれる監督の中でも、彼ほど長く同じチームを率い、そのチームの伝説の一部となった監督はいない。
そして、彼は信念は決して曲げないが、かなり頻繁に<方針>を変える。
スコティッシュはギャンブルを好むのだ。
ベッカムを切り、かつてはカントナも切った(形式的には「引退」だが、ファーガソンの方針転換がキングに引導を渡したのは推測出来る)。カントナを切った事が翌年のトレブルに繋がった事を考えれば、彼の博才は白眉と言えよう。(無論、外れた事も多いが)

ニステルローイは決して衰えてはいない。だが、だからこそ今、ルーニーにその座を継がせなくてはならないのだ。
衰えた後で容易にエースストライカーとなっても、それでは拾ったエースの座でしかない。

横道にそれる事を容赦いただきたい。
80年代中盤、全日本プロレス社長ジャイアント馬場もまた同じ理念で行動した。
絶対的な強さを持つジャンボ鶴田を降ろし、当時まだ若手の旗手に過ぎなかった三沢光晴をエース(メインエベンター)にする方針を取ったのだ。

この早すぎる方針転換は、自分が引き際を遅らせたせいで「エース・ジャンボ鶴田」を今一歩売り出し損なったことへの馬場の反省もあったのかもしれない。既にライバル会社、新日本プロレスでは創業者・猪木離れが済み、長州力人気が確立していた。

ジャンボ鶴田は、葛藤する。
「なぜ、こんな小柄でまだ尻もタイツも青いレスラーに俺のポジションが奪われるのか。」

だが、鶴田は聡明な人物でもあった。
彼自身、ライバルの天竜源一郎がSWSへ移籍して後、興行のアングルの中心にいることは難しい事も悟っていた。
また長州・天竜の台頭以降、鶴田がファンクス道場で学び実践してきた「誰もが楽しめるクラシックなアメリカンプロレス(=アメプロ)スタイル」は、既に大衆のニーズから遅れている事も気付いていた。時代は生身の競り合いを求めていたのだ。

アメプロでは何よりも興行論が重視される。客の熱狂を引き出すため、王者は敢えてピンチをも演出せねばならない。
「相手をロープに振る→ショルダースルーの構えで待つジャンボ→相手に蹴られて逆襲を喰らう→ジャンボ痙攣」という、ジャンボ鶴田の黄金のムーヴ。
だが、それを当時のファンは「手抜き」と揶揄した。
また、どんなに広い会場の最後列までも届くジャンボの派手な受け身(バンプ)は、もはや失笑の種でしかなかった。
裏を返せば,本気でジャンボが戦ったら誰もぐうの音もでない程強い事をファンはとっくに見抜いていたからなのだが。

そして三沢時代が到来する。
機敏でフレッシュでハンサム(注/当時)な三沢の新しいプロレス、後に四天王プロレスと呼ばれる正に骨身を削る戦いに観客は熱狂した。
ジャイアント馬場の賭けは当たった。

だが、そこでジャンボ鶴田は終わってしまったのか。否、そうではなかった。
今、多くのプロレス村の住人は知っている。
「エース剥奪、だが怪物・ジャンボ鶴田はここから始まったのだ」と。

鶴田は、かつて可愛い付け人でもあった三沢を世に認められるエースへ成長させるため、敢えて高い壁になる事を決意する。
魅せるプロレスを第一にしていた鶴田は、その肉体の怪物性を以て、ことごとく三沢を叩き潰した。それはエースという座から降りたが故に許される「大人げない強さ」だった。
もはや興行の流れなど歯牙にもかけぬ鶴田、時にその怪物ぶりは相手選手のみならず、止めに入った味方までも叩き潰した。三沢目当ての女子供がドン引きの中、コーナーに登って「オー」と雄叫び。
だがそこには鶴田の、かつてエースの座にいた時代には無かった悠々とプロレスを楽しむ姿があった。

(会社がどう決めようと俺の位置に上って来れなきゃ、チャンピオンベルトは渡さないよ。)
「俺の位置」とは強さではない。それは鶴田がエースとして作り上げた<格>である。
チャンピオンベルトも然り。それは団体を、そして総てのファンの期待を背負う覚悟を持った者だけが巻く事を許される。

そして馬場の決断から二年。三沢はスタン=ハンセンを敗り、団体の看板三冠統一ヘビー級ベルトを巻く。
それは鶴田に何度も叩き潰されながら、満身創痍の中で「覚悟」を決めた三沢光晴の勝利であり、そしてジャンボ鶴田の勝利でもあった。

その後、鶴田は肝炎を患い一線を引く(2000.5.13死去)。
思い半ば、しかし鶴田にはリング上に於いては自分にしか出来ない仕事をしたという満足感があったと考える。
彼のライバルたち、天竜、長州、藤波、前田。彼らは結局「自分こそが一番」という理念を捨てられなかった為に、その団体を滅ぼした。
今、鶴田の思いは三沢を経て、小橋建太が引き継いでいる。

話を戻す。
現在のニステルローイに、当時のジャンボ鶴田が重ねて見える。
ユナイテッドのチャンピオンは未だニステルローイである。ルーニーは未だその器ではない。

そろそろルーニーは自分が登った山の高みに気付いただろう。
そこの風景、、、この何年もニステルが見続けてきた風景の高さに、目がくらんでいる様に思う。
バーミンガム戦、ウェストハム戦、ボルトン戦、サンダーランド戦、、、ルーニーはエース失格と呼ばれても仕方の無い出来だった。特にボルトン戦では途中投入でほんの数分出たニステルにあらゆる点で劣っていた。何より、
「エースストライカーはかくあるべし」という信念が欠けていた。
エースストライカーはチームを勝たせる為に命をかけるのだ。
ボルトン戦、ニステルのゴール後の雄々しい姿は、今誰がチャンピオンベルトを持っているのかを示した。ルーニーはプレーが軽すぎる。それは則ち、覚悟の軽さである。

今のルーニーの姿に、昨年小橋建太から王座を奪った力皇猛を思う。
前王者を凌ぐ圧倒的な肉体を持ちながら、力皇は王座の重みに潰された。防衛戦を重ねる度、彼の肌の色艶は衰え、頭髪まで抜けた。
(小橋建太は命を張ってプロレスを守ってきたのだ、、、)
力皇にその覚悟が問われた時、ついに彼は敗れた。

ルーニーは壁を越えられるだろうか。
アーセナル戦は悪くはなかった。彼の「覚悟」が見えてきた。

また、これは印象でしかないが、最近はルーニーのニステルへの視線が厳しいように映る。
私はそこに、壁に立ち向かおうとするルーニーの気概を見る。バーミンガム戦、ベンチのニステル投入の気配を察知したルーニーは、さかんにサハを活かすパスを出し始めた。それは、
「この2トップで行きたい、それでなくてはエースの座を失ってしまう」
という危機感に映った。
ニステルを嫌っているのではない。ニステルの脅威を知るからこそ、逆にそれに負けまいという気概がそのようなプレーになるのだ。

追われる怖さを感じられるルーニー、やはり非凡なプレーヤーである。
困難に立ち向かう覚悟は出来ている。ならば、あとはユナイテッドというチームを背負う覚悟を固めるだけだ。
まだ道程は長いだろう。修正すべき点は山ほどある。それまでの間はサハは板挟みで可哀想だが、、、我慢我慢。

最後に、具体的に一つ苦言を申したい。
ルーニーは「ループ病」を直す必要がある(※ループシュートが悪いのではなく、時折GKの位置に関係無く気分で狙っちゃうアレ)。
何故か、、、それは前座レスラーの技だからだ。KENTAの顔面蹴りと一緒。そういう軽いプレーに走るようではエースの座は無いと考える。

そういう彼の奔放さを見るたび、彼がトッティで終わってしまう懸念を抱く。
ローマの王子は、結局王にはなれなかった。勝利への責任感こそがエースの条件であり、それこそがロー、カントナ、ニステルが背負ってきたものである。
無論、ルーニーはまだ若い。本当に彼に「責任感」を求めるべきは下の世代の合流後かもしれない。
しかし、今のルーニーでは下の世代の旗手ロッシにも抜かれる。私はそう感じる。

ルーニーは更に危機感を抱くべきだ。このまま譲る気など更々無いニステルに対して。もう一人の天才ロッシに対して。そして何より、ファーガソンに対して。

ファーギーは方針を変える事に躊躇しない、、、それをルーニーは忘れてはならない。

(記/なるほ堂)
by tototitta | 2006-04-16 15:21 | Manchester United | ▲ TOP
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