6/25 PORTUGAL × NETHERLANDSしかし、何でこんなに悪い方へと転がるんだろうな、この選手は。不器用だからでしょうか。そうか。でも不器用で何が悪い、と。
覚悟はしてたけど、ルートがプレイしないままオランダは敗れた。
思った通り、若い選手や国際経験の乏しい選手達は何も出来なかった。頼りになるのはスーパーマン・ジオとエドさんだけ。
塩 は相変わらず
塩、ハイティンガの
トンパチ ぶりは思ってた以上に発揮された(あの場面で前にドリブル・・・火に油を注ぐ気か)。
それでもチームの一員である限り、闘わねばなるまい。
ルートはベンチから出て一人立ったまま試合を凝視し、時にはサイドラインまで来て下がってくる選手をハグで迎えた。ホイッスル後うな垂れるチームメイトを一人一人慰めてまわって、スタジアムの頼りないオレンジサポに手を挙げて挨拶してた(家族がいたのかも)。それもサブの大事な仕事。そんなルートに真っ赤な目のエドさんがハグしに来ると、どっちが気遣われてるのか解らなかったりするが。
ルートの眼は冷静なようでアドレナリンが沸騰してた。絶望した顔ではなかった。
多分今のオレンジは、喧嘩したらデコ1人に負けるでしょう。あのようなナーヴァスでネガティヴな空気のピッチにルートがもし立っていたら、それはそれでどうなっていたか保証は出来ない。
勿論勝利を願ってはいたが、「カンプノウの奇跡」を目撃した私でもこの日フランケンシュタディオンで奇跡が起きるとは期待しない(ベッカムはいないからね)。
実を言うと、いっそもう、どっちが勝ってもいいから早くこの拷問的状況から彼を解放してやってくれ、とすら一瞬思うのだった。
マルコの考えは私には解らない。なので批判など思いつかないし、多分マルコもガチだから仕様がない。あのマルコに「なっとらん」と言われたらどんな選手でも反論できないし。マルコを説得するだけの猶予もなかった。
でも納得はしない。
例え出来が悪くても、願わくば心中する覚悟でいて欲しかった。システムや戦術に選手を合理的に当てはめても、そこに血が通ってなければ意味がないと思う。特にワールドカップでは。
ルートはロナウドにもトッティにもなれたかもしれないが、マルコが奇跡を信じるカトリックではないとしたら、それは仕方ない。
ユーロ04でベスト4まで行けたのは、身びいきだろうがルートとエドさんの力だったと思う。あの時のような黒ルートが観たかった。そうすればこのチームでも勝てると思ってた。でも黒になれるチームではなかった。メンバーを外れた時、やっと黒ルートの眼を見た気がする。
ルートは決して負けを認めない。彼をあきらめさせる事は誰にも出来ない。子供の頃からそうだったんだもの。
ルートのキャリア最大の1ヶ月は誕生日を待たずに終わった。
とはいえ彼のキャリアはいつもこんな風に挫折で始まって、次に来るチャンスを掴んできたのだった。だからこれは初めてのワールドカップであって、終わりじゃない。
膝の前十字靱帯を断裂した時、手術したばかリの傷跡を見せてルートは言った。
「まだタオルは投げるなよ」
「さまよえるオランダ人」の呪いを解くのは、真実の愛だけである。
あのカズじゃないけど、ルートはドイツに魂を置いてきたと思う。
2年後か、4年後か、彼が誇りを失わない限りきっとそれを取り返しに行くよ。
さて、これでいよいよ
審判の日 を待つだけ。
放牧か、種馬か、馬刺しか、馬主に決めてもらうしかない。
(記&絵/minaco.)