(記&絵/minaco.)
フランソワ・オゾンの最新作
『ぼくを葬る』 。ほうむる、ではなく、おくる、と読むんだそうだ。ゲイのカメラマンが余命3ヶ月と告知された後、粛々と死にゆく様を描いた話。
ではあるが、私は主演の
メルヴィル・プポーに眼が釘付けだった。
これまで何度か観ているはずなのに、名前は知ってても印象に残ってなかったメルヴィル。フランス映画の貴重な正統派美男俳優。えっ、こんなにイイ男だった?滅茶苦茶タイプじゃないの!どうして今まで気付かなかったんだろう。
映画の中で彼はどんどん痩せてゆく。髪もバッサリ坊主になる。最後は『マシニスト』のクリスチャン・ベール並にやつれ果てる。モジャモジャ頭と坊主に弱い私には、一粒で2度おいしい。ゴメンなさい、高尚なテーマなのに出ずっぱりのメルヴィルにのみ見とれてました。まあ、オゾンだし。オゾンもカメラのフレームにメルヴィルを映すのに情熱並々ならなかったのでは。
特に横顔がイイ。鼻の角度がイイ。多分、普通に整った容姿はそれだけじゃインパクトに欠けてたんだろう。実は子役上がりというのも、代表作に恵まれなかった訳か。だからオゾンは病にやつれさせ、どんどん人相を悪くした。コカインを吸って、金髪紅顔の美少年をはべらせ冷たく当たるメルヴィル。悲劇的なのに、主人公には感情移入しづらい映画だ。それが逆にメルヴィルの容姿に意識を集中させた。
以前書いたように、フランス映画で好きなのは
ロマン・デュリス だ。
ある日ふと気付いたが、ロマンはフランス映画の文脈において
ジャン・ポール・ベルモンドの後継者なのだった。決して美男ではなく、映画の中で「動く」事によって生き生きと映る役者。軽妙な身のこなし。硬軟併せ持つ絶妙な力の抜け加減。ロマンは『ルパン(Ⅲ世じゃない)』のタイトルロールを演じたが、そもそもルパン(Ⅲ世の方)はモンキーパンチがベルモンドを意識して作ったんじゃなかったかなあ。
ならば、メルヴィルは
アラン・ドロン を継ぐべきだ。「動」のベルモンドと「静」のドロン。2人がフランス映画を引っ張る2大スターになれば。いささか強引かしら。