(記&絵/minaco.)
今頃ベルイマンの新作、とは。
きれいで広々したシネコンに戸惑いながら(座席指定って・・)、フォーラムさん、やってくれますなあ。嬉しいですなあ。
この調子でガンガン、マイナー作も上映してくれると有難いっす(って、観逃してばかりだけど)。
イングマル・ベルイマンは実際
『秋のソナタ』(’78)しか観てないんだけど、それだけでもお腹いっぱい!って印象です。
イングリット・バーグマン(遺作)が母娘の確執をガチで演じる台詞劇。シャレになんない。
『サラバンド』もまあ、期待を裏切らない家族のドロドロ愛憎劇。登場するのは、元夫婦、その息子と孫娘。更に息子の今は亡き嫁の物言わぬ存在感が怖い。
以前観たイタリアのTVの、視聴者からの実話を元にスタジオで俳優が愛憎バトルをしてみせる、というワケの解らん人気番組を思い出した。
長年確執してた親子の再会劇、とかその修羅場を観客の前で、さも本人のようにアドリブで再現して見せるんである。しかも、その状況に似た体験を持つ俳優をキャスティングするという念の入りよう。他人の不幸は蜜の味と観客は大盛り上がりだ。
普段犬も食わない痴話喧嘩も、ご近所がピアッツァを劇場化して楽しんじゃうイタリアなら、それも解る気がするが。
この映画はスウェーデンだ。刹那のパッションに生きるイタリア人と、長年耐えてきた恨みつらみがいつか爆発する北国の情念は違う。
人生なんてクソだ、と言い切る彼らの暗さはチェロの響きのように、重い(サラバンドって、バッハの無伴奏チェロ組曲第5番の事なんですね)。
だが再現ドラマでも、ドキュメンタリーでも舞台劇でもないのが凄いところ。リヴ・ウルマンのカメラ目線、章立てした構成、どアップの切り返し、ここぞとばかりにインサートする映画的映像(チェロを弾く姿の「マトリックス」的ズームダウン!)。油断した隙にそんな尖った演出を見せられると、強烈ですなあ。
そして何より凄いのは、すべての章が「タイマン勝負」であること。
元夫vs彼を30年ぶりに訪ねる元妻、元妻VS元夫の孫娘、娘VS父親、父親(元夫の息子)VS元妻、孫娘VS祖父、父VS息子・・・すべてに因縁絡む緊迫のタイマン・バトル!
いっそ皆一同に集まりゃいいのに・・・だが、つまるところ1対1の感情は逃げ場がない。閉塞したまま繋がり続けるサーガなのだ。
寒い国ゆえの距離感は身につまされるものの、スウェーデン人って解らんなあ。森の中の寒々しい家や教会は、余計孤独を深めるのだろうか。ブロンド髪の三つ編みは抑圧の象徴か。
デンマーク人のラース・フォン・トリアーも俳優泣かせだけど、ベルイマン映画に出る俳優もハードル高くてキツそうだ(やはり、実体験込みなのだろうか)。
もし日本でこれを演るならリヴ・ウルマン=加藤治子、元夫=三国連太郎、息子=(必然的に)佐藤浩一、孫娘=シャラポア(日本人じゃねえ)で。