(記&絵/minaco.)
TVでやってると、もう何度も観たのについついまた観てしまう映画──
『ダイ・ハード』 シリーズと
『コマンドー』(傑作!)。
特に『ダイ・ハード』1&2は、年末にやってくれると盛り上がる。『素晴らしき哉!人生』と並んでクリスマスの必須アイテムだ。
仕事が片付いたら観ようと思いつつ、いつの間にやらコチラでは最終日。やっと観る事が出来ました
『ダイ・ハード4.0』。
一言で言えば、
「老いたな、ジョン・マクレーン」・・・。
そりゃ1作目から約20年も経ってるんだもの、ブルース・ウィリスの髪も残ってないわな。タンクトップは着られないわな。
『1』では通気口の中でナゼか色が変わったり、『2』では冬装備にも拘わらず、『3』ではさすがにシャツを重ね着しつつ、それでもN.Y.市警マクレーン刑事といえばタンクトップが制服な訳で。
今回スクリーンに登場したマクレーンの革ジャン姿を観た時、物凄く違和感あったんだけど(そもそもB.ウィリスに似合わない)、結局最後まで長袖で通してしまったんであった。
『4』が全米公開前、映画ファンの掲示板にご本人降臨!というちょっとした事件が話題になった。その中で(自称)B.ウィリスは、”『ダイ・ハード』らしさとは ”を語ってみせたという。
でも御本人が何と言おうと、『ダイ・ハード』ファンのワタシにすれば、この映画のキモは以下の通り。
・ジョン・マクレーンは職場でも家庭でも居場所がない。
・なぜなら、ジョン・マクレーンは
「人を怒らせる天才」だから。
・ジョン・マクレーンはどんなに死にそうな目に遭っても、偉そうに悪態をつくカウボーイである。
・ジョン・マクレーンはたった1人のバディを除き、孤立無援。他はすべて足を引っ張る。
・エンディングには懐メロかクリスマス・ソング。
何でも今回の監督は、最初の『ダイ・ハード』を観て育った若い世代らしい。そのせいか『4』では、あちこちに1~2のお約束を踏襲したシーンがあった。
例えば『1』&『2』で人質となった妻のホリーは年頃の娘に、相棒レジナルド・ヴェルジョンソンがオタク青年に、『1』の悪役ハンスが高層ビルから落ちる死に様はマギーQが転落するシーンに、テロリストに見せかけて実は単なる強盗団もサイバーテロに見せかけて実は金目当てのハッカー団に。そしてクリスマスが独立記念日に、最後のシナトラがCCRに、それぞれ置き換えられている。ラストの奇策も相棒の見せ場もお約束通り。
この監督が旧作をリスペクトしてるのは解るけど、過去のお約束事を現代に置き換えるとこうなっちゃうのね、と年月の隔たりを感じずにはいられない。今じゃCCRが懐メロなのか…。
但し、大事なお約束を忘れてる。
マクレーンの周りには
「どいつもこいつも使えねえ」、しかもやる事なすこと
「足を引っ張る」連中が揃ってなくてはならない。
ボンクラな上司とFBI、助けようとしてるのに墓穴を掘る人質、空気読まないTVリポーター、しょっぱすぎる敵。とにかく誰も人の話を聞かないんだから、イライラする。
「気は確かですか?!あの男はたった一人で敵と戦ってるんですよ!」(by パウエル巡査)という、ストレスを最大限演出するダメダメな脇役がいてこその『ダイ・ハード』じゃないか。
観客はそこに日頃の鬱憤を重ね(オレは頑張ってるのに上司やクライアントがマヌケなばっかりに!とか)、彼らをミもフタもなく怒らせ、遠慮なくブチ壊してゆくマクレーンが痛快なのだ。
ところが『4』でその役回りなはずのFBIもCIAも普通に仕事してるし、そもそもストレスになるほどの出番もなかった。敵ボスとの掛け合いはあったものの、マクレーンの毒付き方にもいささかヤキが回ったか。
それにこう何度も死にそうな目に遭ってると、マクレーンも慣れてくる訳で。20年後のマクレーンは強すぎる(裸足に刺さったガラスの欠片をヒーヒー言って抜いてた昔が懐かしい!)。
それなら脇キャラのダメっぷりも20年分パワーアップさせて欲しいものだ。
このシリーズの魅力の根幹には、「ダメ人間大会」があるはずだ。
1作目は低予算でメジャー俳優を使えなかったおかげで、脇キャラを徹底的にしょっぱく出来たのが成功の要因でもあると思う。
そして今回は過去をリスペクトしすぎた結果、「やはり昔のは名作だった」と再認識させてしまったのが惜しい。
むしろ
クリスマス、タンクトップ、シナトラの3点セットさえあれば、充分『ダイ・ハード』らしいと思うのだけど。
そんな訳で、今年のクリスマスには『1』&『2』を観て年を越す予定である。お約束ですからね!