(記&絵/minaco.)
<#5 / UTD × SUNDERLAND>
オーレの引退発表は、この日のオールドトラフォードでセレモニーをしたかったから、かもしれない。キーノの前で。
サンダランド監督として、ヒゲを剃り落とし正装したキーノがユナイテッドのスタッフとトンネルを歩く。迎えるオールドトラフォードのおばちゃん達の笑顔が何ともいえず、イイ。
ガムを噛みながら主役の登場。待ち構えたファンのチャントを背に受けても、監督キーノは格好を崩さない。そのままビジターチームと書かれた場所へと階段を昇ってゆく。
「遊びに来た訳じゃねえ。勝ちに来たんだよ」
そう顔に書いてあった。
そしてもう1人の主役オーレが現れ、ピッチで最後の挨拶をする。こんな風にただ穏やかな陽光に手を挙げる姿が、オーレのセレモニーには一番似合う。
最後にキーノが再び階段を下りて来て、戦友をハグして何か言葉を掛けた。
以前(ルート同様)「無人島で一緒に居たいのは?」と訊かれた時、
「キーノ」と答えたオーレである(話してて愉しいから、だそう)。そんな強者はオーレくらいだよ!なんて事も思い出してしまう光景。
──もう、試合前でお腹一杯でございますよ。
今やユナイテッドの
亡命政府とも、
アイリッシュ互助会とも言われる(?)サンダランド。ドワイト・ヨークにミラー、マクシェイン、リッチー、スタンドにはアンディ・コール。
ヨーク&コールの”悪魔の双子”再結成は見られなかったけど、新旧よくぞ集めてくれました(ああ、イアン・ハートも観たかったなあ)。いや、サンダランド・ファンには申し訳ないけど、この日はまるで
「ユナイテッド・ファン感謝祭」ですか。正直他の選手はゲスト、試合はおまけに思えるほど。
試合中何度もキーノのチャントが聞こえてきて、ユナイテッドの昨日・今日・明日が混在するオールドトラフォード。
この超保守的なクラブのファンが何をもって選手を測るか、ハッキリしてる。
クラブより大事な選手などいない。でもクラブにすべてを捧げた選手は忘れない。
今のユナイテッドは勝てば勝ったで嬉しいけど、例え勝てなくてもそう酷いものではない、って感じ。
新しい形はまだ整わないが、早くもこれだけは言える。今季のサー・マット・バスビー賞候補はハーグリーヴス。鼻の利く番犬みたいな存在感で、既にユナイテッドファンの心をわし掴みだ。
しかし何しろ前線の選手が皆20歳前後。ギグスお休みで先発したアンデルソンはなかなか堅実なプレイぶりではあるが、不慣れなチームの不慣れなポジションでテベスは所在無さげだし、ナニは”スリラー”ⓒマイケルだし。
その他注目はヴィダの「近くに誰も居なくてどうしようパス」、ブラウンの「とりあえずクロス」、交代しようとしてベンチに逆戻りしたキャリックのふてくされた顔。サハ復帰初ゴールおめ。
何だか今季はひょっとしてネタクラブ?という気もするのだけど、それはそれでツッコミながら愉しむのが吉。
変な話だけど、好きなクラブって「自分がもし選手だったらそこでプレイしたい」所なんだと思う。
昔ワタシが好角家だった頃、力士だったら、または息子が居たら(故・琴桜の)佐渡ヶ嶽部屋に入門させたいと思った。それと同じで、キーノのチームでプレイしたい、と思ってしまうものがある(いえ、サンダランドに入りたい訳では)。
何なんでしょう、もう何十年も監督やってきたみたいなキーノの風情は。サンダランドは負けても、アナタの勝ちです。参りました。
ヨーク&コールを見て、ルートも引退前にどこかキーンの率いるチームでまた一緒にやれたらいいなあ、なんて勝手な妄想が広がるのもいいでしょう。