(記/なるほ堂)
昨夜の
中秋の名月をご覧頂けなかった方々の為に、我が家のベランダから見た月を。
我が家のベランダには、時に珍客も訪れる。下の写真は
『チゴハヤブサ』という鳥(らしい)。
先日の大雨の時、我が家のベランダの軒下で雨宿りしていたチゴハヤブサ。ずぶ濡れて、折角の模様がよく見えなかったのは残念。ここ盛岡では川向こうのエグネ(居久根)や天満宮辺りに居を構えているらしいから、そこからの出先の最中に雨に祟られたのだろう。窮鳥ベランダに入らば、証拠写真を撮る。
生き物繋がりで、
『イシモチ』という魚の話。別名を
『グチ』とも言う。
「頭の骨の中に石を持っているからイシモチ」というのは知っていたが、釣り上げられると「グーグー」と愚痴の様にうめくからグチと言うのは最近まで知らなかった。非常に親近感のある魚だ。愚痴ばかりの僕としても、また石持ちって所も……。僕の持っている石もたまに悪さをして、困ってしまう。それが、ここの所ブログご無沙汰の原因だったのだけれども、容態も安定したのでまたいつもの様に(……でも、愚痴は控えめに)。
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ラグビーW杯を見ている。
WWEを凌ぐ巨漢同士のぶつかり合いを、観戦初心者のMinacoにボード片手にルール解説し乍ら楽しんでいる。
ラグビーではJK現役当時からのオールブラックス党の僕、なんとかMinacoをこちら側に引き込もうとしている最中だ。ブラジルサッカーファンに教育し損ねた過去を繰り返すまい、と。
「農夫のセクシーさ」に弱い彼女のツボを付き
リッチー・マコウを。リオ・ファーディナンドの顔をしてギグスの様にプレーする
ハウレットを──そこら辺から攻めたら、今の所効果有りの様だ。今度はハカを教えようか。
だが、彼女が面白がるのが
おもしろ妖精軍団ウェールズであり、一番感嘆するのがフランスの
インテリジェント・モンスター=シャバルさんというのも事実。仕方ないか、シャバルさんはカントナに通じるフランスガチだもの。
僕としても、この予選リーグの中で一番面白いのはフランスだ。
持論だが、サッカーでアズーリが好きな方は、ラグビーならばフランスを応援できると思う。アングロサクソンが作った競技を、ラテン風のマチズモで解釈し、やたらと「俺のハダカ!」を見せたがる。(未成年の方もご覧になるここでは、画像は紹介できない)
10番
ミシャラクの気まぐれな王様的プレーにはトッティを、またフランスの特徴である敵のラインブレイクを阻止する強固な守備にも、どこかカンナバーロ的な「華」を感じる。言い換えれば「個の輝き」──所謂「皆でわっしょい!」的なモチャモチャした守備ではなく、そこには「俺が止めてやる!」的な、集団から自立した責任感が感じられるのだ。
我々に広く知られる所のラグビー精神
「one for all…」よりも、
「個人のマチズモ」みたいなのが先行する、とでも言えば良いかもしれない。勿論彼らとて強い団結心はあるのだが、その拠り所が、何処か我々の知るラグビーとは違う香りがするのだ。
フランス対アイルランド戦。試合中に
イバニェス主将と
SHエリサルドが、意見を異にして対立する場面が見受けられた。どうも、主将を差し置いて、エリサルドが「俺のゲームプランの方が正しい」と譲らない様に。それは、とても新鮮な風景に思った。
南半球、サモア・トンガなどの「諸島系」を含むオールブラックスにしても、アングロサクソン由来の「主将の下で団結して戦う。死なば諸共!」的な形で結束しているが、フランスはどうやら趣が違うようだ。無論、それは否定的に見る物では無く、むしろ好意的に捉えるべきだろう。ラグビー精神は、色々な文化の中で新しい解釈を重ね、そして深化していく。かつてサッカーが、W杯を経る中でそうであったように。
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ラガーマンたちを猛火のビルに飛び込む
消防士たちに例える見方がある。
なるほど、オールブラックス主将のマコウなどは、正に消防隊のリーダーのようだ。誰よりも真っ先に火中に飛び込み、続く仲間の隊員たちが進む為の道を作る。
もしも我が家が火事になったら、オールブラックスに助けに来て欲しい。
激情家ケラハーが泣きながら「火事だ! 火元はあそこだ!」と叫ぶと、燃え盛る家の扉を破ってマコウが突入。続いたハイマン(スクラム機械)ら屈強なフロントロウが瓦礫を押しのけると、最凶アリ・ウィリアムスと心優しき巨人ジャックが、今にも崩れそうな天井を支える。すると、その下を縫って素早くハウレット、マカリスターがホースを運び、飛び火した厄介な炎もコリンズがチン火だ。そして最後には、ハンサムなカーター君が「もう大丈夫。怪我は無いかい?」と優しく語りかける。ああ、萌え萌え。
で、
日本代表はどうか。残念乍ら、彼らは頼りにはならない。
それは勿論、彼らのせいではない。
日本の消防活動は欧米とは違い、消化よりも火事を未然に防ぐ事、つまり見回りやスプリンクラーを設置するといった「火事予防」が第一だ。それはそれで素晴らしいのだが、例えば「普段だらだら→いざという時は猛烈に戦う」タイプと、「普段からこまめに努力する」タイプでは、残念乍らこと火事場の戦闘力のMAX値では前者が勝る。否応無くラグビーが80分間の戦いである以上、戦う事態を起さぬ事を第一とした日本の消防士たちには分が悪い。
しかも今回、桜のジャージを纏った我らが消防士たちは、そんなせめてもの日本人の利点である「普段からの準備の積み重ね」すら出来ていない状況だ。北の鉄人・新日鉄釜石は、心優しき田舎の荒くれ者の風情はあれど、その実は妥協無き研究家軍団でもあった。しかし今のラグビー界はそういう研究の積み重ねを遮断するかの様に、どっち付かずの強化を重ね、大学閥の顔を伺ってはその度に選手戦術が入れ替わり、W杯招致の為に「強化」よりも「結果」に走って外国人選手を頼り……で、その挙げ句に選ばれた今大会の選手たちは、あたかも業火の中に
家庭用消火器を持って突っ込まざるをえない消防士そのものだった。
だが、そんな彼らにも……否、そんな彼らだからこそ「一勝を」の願いは尽きない。
満足な準備も無く、得るべきバックアップも無い彼らだからこそ、僕は勝たせてあげたい。
そして、
涙の数だけ強くならない、反・岡本真夜的な繰り返しの中でも、いつかアスファルトならぬ
「石に咲く桜の様に」と、花咲く事を願って来たラグビーファンの願いが込められた一戦、それが昨夜の最終戦、
カナダ戦であった。
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カナダから届くのは手紙ばかりではなかった。
ドライビングモール フロム カナダ。平尾昌晃、畑中葉子。
前半をリードで折り返したものの、後半カナダは優位なFWのパワーを全面に、更に日本陣内へと攻め入る。しかし、試合前から満身創痍の日本もそれに耐える。5年前、釜石の10大会ぶりの全国大会出場を阻んだ、いわば岩手県民の仇敵であるNEC箕内主将のトライ防御には心震えた。今ならば許そう(って、未だ引き摺っていたのか)。しかし、怪我人続出で本来のポジションではないロビンスの伸びないキックが恨めしい。そして逆転を許す。
しかし、そこからが日本なのだ。
赤い風船(『遠い世界に』/五つの赤い風船)ならぬ、赤い桜のジャージに乗って遠い世界に旅に出た、これが日本だ。私の国だ。
フィジー戦に続き、ロスタイムに入ると何かが始まる。
場内にはジャポンコール、フランス人たちも日本の諦めない戦いを知っている。またしても異国の人々を総立ちにさせたジャパン、それを誇らしく思う。そして選手たちもそれに応える。
我慢、猛攻、継続、そしてフィジー戦では果たせなかったトライ。
「amazing feeling」
幾多の名勝負を重ねて来た、我らのヘッドコーチJKをして、そう言わしめた瞬間。
日本人として、それを解説しよう。それが我ら民族の
『火事場の馬鹿力』
だと。それが日本の火消しの底力だ。
大西が、同点のゴールを狙う。松任谷由実の歌は縁起が悪いので思い出さない。
決して本職ではない、今大会度重なる怪我人のせいで廻って来たキッカー役を懸命に務めて来た大西。しかも、彼自身も今や、この80分過ぎにピッチに立っている事さえ驚異的な程の満身創痍である。
蹴り上げられた楕円球の、ゴールへの真っ直ぐな軌跡に、神様が降りて来たかの様に思った。
まさに──、
そして終りの時、我々の前に立った神は、我らに微笑んだ。