(記&画/minaco.)
今年観た映画の中からいくつかの感想を、ゆるく。
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『プラダを着た悪魔』('06)
いやワタシはね、悪魔ってゆうから、この編集長(メリル・ストリープ)がどんだけ主人公(アン・ハサウェイ)をいぢめるか、を期待してたのだ。
そりゃもう、ハートマン軍曹の如く「この蛆虫めが」とか、そのくらいはシバキ倒してくれるだろうと。「あかんたれ」のご寮さんの如く、労働基準法無視で丁稚奉公のようにこき使ってくれるだろうと。「ER」のロマノ先生の如くさぞかし気に障る上司だろうと。
なのに、結構普通に良いボスじゃないか。結果出せば認めてくれるし、やってる事は正論だったりする。
ワタシも昔は堅気の仕事に就いた事あるが、この映画よりアレな上司の思い出も。日本のサラリーマンなら「ウチに比べればマシ」と思うんじゃなかろうか。
主人公も「ばかでのろまなカメ」だったらともかく、ファッションに疎いだけで能力はあるし、カワイイし、要領も悪くない。そりゃストレスは溜まるだろうけど、むしろトントン拍子に出世していくし、ワタシゃ彼氏にちょっと同情したよ。
そんな訳でイマイチ感情移入できなかったけど、コレはかつて'80年代にあった『ワーキングガール』と同じ系譜なんだな、と納得した。当時はキャリア志向のサクセスストーリーだったけれど、現代では「成功」より「幸せ」がプライオリティになってる。時代の変化にしみじみ。
あと、久々に気合入ったメリル・ストリープを観た。ファッション界の重鎮らしく、仕草や身のこなしが洗練されてて、さすが"元ミス・ニュージャージー”(確か)なんて妙な感心をしたりする。
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『エレクション〜黒社会〜』('05)
香港映画に今ひとつ疎いせいか、大勢が出てくると誰が誰だかよく解らなくなる。どれがレオン・カーファイだったのか、未だに解ってない。
しかし、これは
傑作ノワール映画。観て良かった。
タイトルバック、そこに流れる音楽が良くて、そこだけでグッと掴まれる。麻雀してる部屋をゆっくりと捉えるカメラがまた、ムード満点。
最初は『仁義なき闘い』みたいな映画かと思ったら、むしろ緩み無く渋いブレッソンみたいなイメージに近かった。バイオレンス描写はエグイし怖いのに、どこか奥ゆかしいというか、バリエーションがあって見せ方を心得てると思う。
香港黒社会の会長総選挙ってのも興味深い。ドンになった証である龍頭棍(水戸黄門の印籠みたいな?)の奪い合いも、たすきリレーみたいに運ばれるのが面白かった。
善かれ悪しかれ伝統には必然性がある。由緒あるタテ社会の維持ってのは難しいものなのだ。伝統を守るには代償も伴うのかも。ついユナイテッドを重ねてしまいますたよ。
だって、映画の中にユナイテッドの話題も出てくるのだ。さすが香港、フットボール賭博でユナイテッドに賭けて大損した男が言う。
「あのGKは最低さ」
……それって、キャロルのことですね (;´∀`)。
それにしても、食事する場面が多くて(香港映画はみなそうなのか)いちいち何を食ってるのか気になります(レンゲ以外)。どこかにこの映画の献立表があればいいのにな。
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『ジャケット』('05)
観る前に仕事でイラストを描いた事があったのだが、「ジャケット」ってそうゆう意味だったのね…。
エイドリアン・ブロディに可哀想な役をやらせるのは反則。重すぎるもん。この人は以前クラシカルでコミカルなギャング役が似合ってたし、いっそ現代のバスター・キートンになってほしいところ。
映画は、映像全体のトーンや狙いが似てる『バタフライ・エフェクト』を思い出す。酷い映画ではないけど映画館で観る程でもない、TVでやってたら観るかな、ってゆうまあそのくらいのスケールなのだが、ブロディら役者が頑張ってるところがちょっと痛い。
脇役でダニエル・クレイグ=ボンドにそっくりな人が出てて、似た人だなー、でもこんな汚れ役やる訳ないし違うよなー、と思いつつ、エンドクレジット観てビックリ仰天。
クレイグだよ。更にブラッド・レンフロの名前も。え、まさかと見直したら確かに出てた。コレが遺作だったのか…。