ヴェンダースといえば思い出すのがずっと昔、飲み会で映画談義をしていた時に一人の女性が言った言葉。
「ヴェンダースが好きな男の子は扱い易い」
私は深くうなづいた。ついでに私も言わせてもらうと、
「J・ビノシュが好きな男の子も扱い易い」
それは確か'90年代初めの頃。当時ちょっとしたブームだった気がするヴィム・ヴェンダースとかロードムービー。観る機会を逃したまま、最近になってやっとこの映画を観た。
今は'05年。
今観るとこの映画が好きだ。何でか解らないけど好き。
ハリー・ディーン・スタントン(今はすっかりおじいちゃん)が4年の失踪の後、家族の元にひょっこり戻って来るのだが、彼の7歳の息子が登場した時から俄然話が面白くなる。
ハリー・Dの飄々とした佇まいも良いのだが、この息子、これまで観た子役の中でも最高の演技をする。演技といっては失礼なくらい、その喋り方も表情もフツウなのだ。この子、何者?
観てるとこのゆったりとしたテンポを新鮮に感じる。余白だらけで話の行間を読む映画。ライ・クーダーのボトルネック奏法ギターが尚更時間を弛緩させる。ポエジーって奴があったのね。
でも、これが通好みのトレンドだった頃に観てたら、蘊蓄を傾ける違いの解る(つもりの)男共を鼻で笑ってただろうなあ。私も年を取ったってことかなあ。扱い易いと思うのは変わりないけどね(思うだけです)。
あと、 チョイ役で出てた
ジョン・ルーリー。懐かしいな。私の馬面好きは昔からだったのね…。
ところで、この映画の撮影カメラマンは
ロビー・ミュラー(ずっとドイツ人だと思ってたら実はオランダ人だった!)。
私はなるほ堂のようにカメラワークにこだわりがある訳じゃない。どこが優れているという理由ではなく、ミュラーの映す映像は私と相性がいい。
例えば
「ダウン・バイ・ロー」(監督ジム・ジャームッシュ/'86)の冒頭、走る車から見えるモノクロの空と雲を観た時、(トム・ウェイツの曲とも相俟って)デジャヴを感じた。ミュラーのカメラが切り取った風景は私にとって何よりもリアル。
同じ風景を見ても人それぞれ眼に映る映像が違うはずだが、ミュラーはいつも「いつか私が見た空」をフィルムに映してくれるのだ。
(記&絵/minaco)