(記&画/minaco.)
オスカー俳優でありながら、ある日突然靴職人となって隠居。再び映画界に復帰すればオスカー候補。そして復帰後2作目で、2度目の主演男優賞受賞。
ダニエル・デイ・ルイス(以下デイちゃん)
はガチ。
今年のアカデミー賞は、彼を始めハビエル・バルテムにティルダ・スウィントンといった、いわば
「反則」的役者ばかり。主演女優賞も役柄はシャンソン・ガチのエディット・ピアフだったから、正にガチ揃いであった。
正直、デイちゃんのガチっぷりは賞をあげてたらキリがない。この人と争ってガチで勝てる俳優はいない。
そんなデイちゃんが出ずっぱりで2時間半余の映画、
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』。20世紀初頭のアメリカで、主人公(恐らくアイルランド移民)が石油掘って一代で財を築く半生。
「石油ガチ」な主人公は、かつての(デイちゃん代表作であり傑作の)『エバースマイル・ニュージャージー』('89)での
「歯医者ガチ」と重なって見える。各地を周り、狂信的な目的を果たそうとする2人。方や石油ある所へ、方や虫歯ある所へ。
歯医者は神の使いとして虫歯根絶のミッションを遂行するものの、受け入れられずに苦悩する。オイルマンは神をも取り込んでビジネスを遂行するが、神には受け入れてもらえない。まあどちらも周囲はドン引きだ。
理想に燃える歯医者だったデイちゃんは、18年後にハッピーエンドとアンハッピーエンドに反転したんである。
映画では、『ミス・リトル・サンシャイン』で寡黙な兄を好演したポール・ダノ(メッシ似)が重要なキャラクターとして対抗するのも見ものだったが、所詮すべてはデイちゃんありきの映画。どこを切ってもデイちゃん味。
ファナティックなガチ道とその末路を見る映画であり、それ以外はない。
しかし、今後もデイちゃんを使う映画は限られるだろうな…。グランド・スラムにだけ出て、優勝をかっさらう選手みたいな。その間はまた靴職人でもするのかしら。