(記/minaco.)
追記
*ちょっぴりネタバレするかもしれません。
奇譚ものというのは好きなジャンルだ。その奇抜な設定の一点突破。スティーヴン・キングやサキの短編みたいなの。
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』('08)は、老人から赤ん坊へ人生を逆行する男の物語。ワタシは思った。これってつまり、○ッベン?なるほど彼は今60代くらいで、この先どんどん若返り、全盛期を迎えるのはあと30年後なのか…。
って、それはさておき。
監督がデヴィッド・フィンチャーというので、てっきりワタシは『エレファントマン』のような映画になるかと思った。勝手にデヴィッドつながり。
けれど、どうもお行儀のよいお伽噺みたいである。冒頭から日記形式だと解り、何やらデジャヴな気分。悪い人が出てこないし、流されるまま激動の時代背景を生き抜く無垢な主人公は、どこかで見た事のある気がしてならない。最先端のCG技術があざといのも、何かと似ている。
こりゃ
『フォレスト・ガンプ』じゃないか。
実はロバート・ゼメキス監督じゃないか。
同じようなヒロイン像、チョコレートの箱がハチドリに、鳥の羽根がボタンに、ダン中尉がマイク船長に、トム・ハンクスがブラピに代わっただけじゃないか。後で知れば、脚本が同じ人じゃないかー。
確かに、ファンタジーとしては磐石だ。とはいえ、こういう設定には理由などない方がシュールで面白い。同じネタで悲劇にも喜劇にもなり得るはずで、もっと皮肉な後味にもできたんじゃないかと思うともったいない。もしもこれがブラピじゃなくて、例えばダニエル・デイ・ルイスだったらどうだろう。ついでに監督もPTAならば。イイ話にはなりそうもないけど、奇譚なんだし。
ブラピはまたもロバート・レッドフォードをなぞり…昔レッドフォードがやった『華麗なるギャッツビー』と同じ、F・スコット・フィッツジェラルド原作つながりである。老けるのはともかく、若返るとほんとにデビュウ当時の恥ずかしいブラピそのもの。これらみんなCG合成で、演技は顔だけしてるかと思うと結構間抜けだお。
ベンジャミンくんは、特殊な境遇だけでもうひとつ強みがなかった。あるとすれば精力。何せご老体であろうとピチピチであろうと、かなりお盛んですもの。ヒロインと後々肉体年齢差が開こうが、それもプレイと思えばいいじゃない。
あと、ヒロインの子供時代をエル・ファニング(ダコダの妹)がやってるんだけど、彼女の声が悪女みたいで子役にはあるまじきエロさである。今回、そのしゃべり方をケイト・ブランシェットも若い頃の演技で真似てるみたいだった。どうやらファニング姉妹の行く末も大人から子供に逆行していきそうで、それこそ数奇な運命かと…。