(記&画/minaco.)
俺はユナイテッドを応援するよ。バルサは最高のプレイしなきゃユナイテッドを倒せないだろ。ユナイテッドが本命だと思う。(元チームメイトとは)何人かと話したんだ。連中は勝つ気満々だよ。
この決勝の前にマドリーTVのインタビュウを受けたルートは、ユナイテッドを応援すると断言した。
やっぱ観るんだ。
「バルサは特別な事でもなきゃ勝てないね」とも言及している。彼の予想は勝負強いユナイテッドの圧倒的有利らしい。昔の仲間には激励でもしたんだろうか。勿論、マドリーの敵だからじゃない。試合前にこれを読んで、反射的にちょっと涙腺が緩む。彼は知っていただろうか。
5月26日がサー・マット・バスビーの生誕100周年だった事を。
しかし、結果はルートを裏切ってしまった。もしかしたら、彼の中には自分が居た時代の残像があったのかもしれない。残念ながら、実際はキーノは勿論いないし、ギャリーもベンチに入らなかった。グダグダになったのはユナイテッドの方だった。
困った事に、長年ユナイテッドファンやってるとリードされるくらいじゃビクつかないもんだ。何せ、
90分間何もできなくても優勝しちゃった経験があるので。ロスタイムは奇跡の発動にワクワクするくらいで。
しかしまあ、こうなった理由はいくつか納得がいく。まず、ピッチの芝がとても短かった。
ゴルフで言えば、非常に硬いグリーン。いつもならキャリックの長いアプローチショットはセンサーが付いたようにピンを捉えるんだけど、この日はグリーンからこぼれてしまう。決めパスが尽く繋がらない。勿論バルサも慣れないピッチに戸惑ったと思うが、ショートパス中心なのでユナイテッド程には影響されなかっただろう。
CLではよそゆきの戦い方で成功してきたユナイテッド。縛りがあるバルサに比べ、システムも選手もより多くの選択肢を持ってるのは有利なはずだった。でも、それが裏目に出る。
ファーギーは何度かしているように、ロンをトップに置いてみた。よそゆきの服(方法論)だった。本当は、普段着でよかったのだ。でも策に溺れたというのは言いすぎで、これはフレッチが居たならもっと機能したと思う。逆に、彼が居なければ上手くゆかない事に気付く。
結局、フレッチじゃなかったこと。それが一番大きい。いつのまにかユナイテッドの命運をフレッチが握ってたなんて!
いきなり話は飛ぶけど、試合前に
ジロ・デ・イタリアを観た。
マリア・ローザはロシア人メンショフ。それを追うのはイタリア人“ダンディ”ディルーカ(
画像 )。殺し屋とも呼ばれる眼光で、レース中睨みを利かせている。沿道のファンが水を掛けたり、バイクカメラが近寄ったりしようものなら、すかさず噛み付く。邪魔な者、仁義無き者は容赦しない。
タイム差を詰めるため山岳で何度もアタックを仕掛けるが、その度メンショフは顔色一つ変えずにピッタリ付いてくる。ディルーカが一人で引いてても、自分はリスクを負わないメンショフ。横綱相撲、だけど面白くない。そもそもマリア・ローザがあるのは自分からアタックした訳でもなく、個人TTで圧勝したんだし存在も地味だし(すまん)。
ディルーカのカッコ良さは解り易い。第17ステージで、彼はゴールラインを切るまでメンショフを振り返らなかった。これが漢ぞ、と。リスクを負って攻める。必死な顔で闘い全力で己を主張する。故に説得力が違うのだ。
強さだけが勝者じゃない。どんな勝負でも、エース(メインエベンター)たるものは説得力が無くてはならない。その闘い方がピープルズ・チャンピオンを決める。
で、ユナイテッドに話を戻す。しょっぱい試合をやってもうた。ロンは黒塩に変貌したけど。
以前のユナイテッドは、一張羅しかないので解り易かった。流行遅れになろうがシンプリー・ザ・ベスト、それがユナイテッドである。よそゆきを何枚持っていても、いざ着る服を選び間違えてはいかん。迷う程持たなくても良いではないか。フレッドくんはいつも一張羅ではないか。ディルーカ様はピンクしか似合わないではないか。
途中から入ったスコールズを見よ。
あの狂ったタックルを見よ。あれは危険だけど正しく全身スコールズだ。彼は彼において、何にも間違っちゃいない。あれ以上の説得力はない。
それでも、これまでピッチにギャリーもギグスもリオもエドさんも居ない場合であろうとも、決してキャプテンバンドを巻こうとしなかったスコールズが、キャプテンバンドを巻いた。
奇跡は起こった。
【付記】
気掛かりの件は、ひとまず解決したと思う。ガラタサライには行かないよね、よかった。